「くちづけ」2013

批判もある映画です。曰く、泣かせようとするあざとい演技が過剰。曰く、舞台そのままで映画としての独自性がない。曰く、結末が評価できない。そもそも知的障害者を涙のネタにしていいのか、等々。 でも私は、この映画を断然支持します。宅間孝行と堤幸彦の…

「空也上人がいた」2011

“宿命”と“運命”の違いを意識して使う人がどのくらいいるのかわからないように、“事実”と“真実”の隔たりを考えようとする人の数は決して大多数ではないように思う。そんなことに拘ることに大した意味はないだろうと仰る方も少なくないだろうし、第一そんなこ…

「天下御免」1971〜1972

日本の各家庭にテレビ受像機が本格普及したのは1960年頃から。敗戦の傷跡を乗り越えた新時代を実感させる2つの国民的イベント、皇太子御婚礼と東京オリンピックが普及の追い風でした。1970年の日本万国博覧会の頃にはカラー化が大きく進み、現在のTV番組…

「幸福」1980

8月21日、俳優竹脇無我氏が亡くなりました。70年代のTVドラマ黄金期には清潔で知的な二枚目として活躍されていて、私たちの世代には本当になじみ深かった。奇しくも名脚本家向田邦子氏の急逝は30年前の8月22日。竹脇氏は向田ドラマの常連のひとりでもあり…

「モールス(LET ME IN)」2010

オリジナルであるスウェーデン映画「ぼくのエリ」2008は断片的にしか見ていませんが、このハリウッドリメイク版は今年の初めから公開を心待ちにしていました。米国の興行成果が振るわなかったそうで、今を時めくクロエ・モレッツ主演ながら都内でも上映館が…

[TV]「必殺必中仕事屋稼業」1975

以前から観たいと思っていた「キック・アス」2010、予備知識をあまり仕入れず鑑賞。奇妙なバランスの面白い映画でしたが、途中から「これは“必殺シリーズ”のプロットではないか」という考えが頭の中を占有してしまいました。 悶々と平凡な日常を過ごす高校生…

「トゥルー・グリット」2010

コーエン兄弟とはどうにも波長が合わず好きになれずにいました。でも本作はお見事。腹に響くエンターティメントを魅せてくれました。アカデミー賞ノミネート10部門は伊達じゃなかった。ジョン・ウェイン主演「勇気ある追跡」1969の事実上のリメイクになる本…

「二十四の瞳」1954

2.木下恵介が描いた涙 戦後の日本映画黄金期を支えた巨匠のひとり、木下恵介監督作品。天才と称される木下の映画で、おそらく最も多くの観客を動員した作品。日本が壊滅的な敗戦を経験して9年目に公開された本作は、その年の興行面と批評面で圧倒的好評を…

「世界大戦争」1961

1.松林宗恵の描いた戦災 生前の松林宗恵監督に「世界大戦争」1961のお話をうかがった時、私自身が消化しきれなかった部分がありました。それは、監督が戦争の災禍を“人間の小賢しさで左右できない歴史の動き”として描いて来られた姿勢を語られたことでした…

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」2010

「宇宙戦艦ヤマト」のファースト放映をリアルタイムで視聴したのは中学の時。毎週のTV放映の吸引力は当時強烈な記憶として残っています。「ヤマト」が再放映からブレイクして徳間書店の「アニメージュ」創刊を産み、今日のアニメ・サブカル文化の礎を形成…

「キングダム・見えざる敵」2007

私のように超ドメスティックな日常を過ごし、目の前の諸事ばかりに没頭していると、世界の現実に我が身を重ねることを忘れがちです。例えばサウジアラビアに生きる人々の現実を想像するなど思いもよりません。私も平和ボケした日本人のひとりと反省します。 …

「氷雪の門 樺太1945年夏」1974

終戦の年、8月15日を過ぎたにも関わらず樺太で起きた最後の地上戦。ポツダム宣言を受諾し無条件降伏をした日本ですが、8月23日頃まで他国の軍隊に領土を蹂躙され一般市民の殺戮が行われていた事実を、多くの日本人が知りません。本作は、樺太の悲劇の中でも…

「暗闇仕留人」1974 「必殺必中仕事屋稼業」1975

講談社から発売されている必殺DVDマガジン。レンタルに出てきづらい初期の必殺シリーズからキャラクターごとに2エピソードずつ抽出して廉価で販売。そうそうDVD-BOXなど買えませんのでこれは助かりました。お蔭で久し振りに再会できました。若き石坂浩二…

「2001年宇宙の旅」1968

BDプレーヤーとしてPS3を利用しています。これがなかなか良い画質。レコーダー機能は不要と割り切って使ってみると、ゲーム機のユーザビリティは明らかに家電メーカーの思想と異なります。こういう微妙な実感差異って、今起きつつある変化を認識する上…

「小暮写真館」2010

2ヵ月も更新をサボってしまいました。忙しかったこともありますが、書きたくなるネタに意外と出会わず、ちょっと不思議なブランクでした。さて、久し振りに読んだ宮部みゆきの新刊。「小暮写真館」。小暮写眞館 (書き下ろし100冊)作者: 宮部みゆき出版社/メ…

「七人の侍」1954

10代の頃、井上ひさし氏の作品はよく読みました。大人になってからは氏の主張のすべてを支持するという訳にはいかなくなりましたが、それでもエンタメとして文学として、常に高いレベルの描写を生み出し続ける力量とエネルギーには圧倒されてきました。 例え…

「火の魚」2009

とっくに絶望してたTVドラマですが、時に鮮やかな光を放つ作品に出会うことがあります。ここ1年ほどに観た劇映画を含む国産の映像劇で、私には最良の作品でした。 映画とTVドラマの差異は、もはや映像技術ではなく興行形態の違いしかないと思っています…

「アバター」2009

“筋立てが新しい訳ではない”といったコメントを多く見かけますが、そんなことは本作の本質ではありません。商業映画として観客がきちんと楽しみ感動を体験して劇場を後にするための定石というものは必要で、それをどれだけ新しい表現としてクリエイトするか…

「北国の帝王」1973

“男性的映画の巨匠”ロバート・アルドリッチの沢山の代表作のひとつ。長いこと“未だ観ぬ名作”として焦がれていました。リー・マービンとアーネスト・ボーグナインの二人主演。キャストだけで最高濃度。硬派この上ない映画として評判通りのアクションでした。 …

「怪獣大戦争」1965

私が劇場で観たおそらく3本目の映画がこれ。実際には最初の公開から何年か経って“東宝チャンピオンまつり”のために短縮編集された「怪獣大戦争・キングギドラ対ゴジラ」を観ています。 怪獣映画としての質はそう高くない作品です。「三大怪獣・地球最大の決…

「東のエデン」2009

劇場版は未見なので、ここではTV放映分全11話についてのみ言及しています。 商業映像コンテンツは往々にして見事に時代の気分を内包するもので、プロダクションIGで神山健治が作り出した本作はまさに該当する作品でした。羽海野チカのキャラ原案や、謎め…

「HOUSE」1977

今日様々な分野で閉塞感と衰退が語られますが、とっくの昔に日本映画はその気分を潜り抜けて来ました。1950年代後半の黄金期を過ぎた日本映画興行は、TV放送本格化とレジャー多様化の中で急速に衰退。栄華を誇った大手映画会社の撮影所システム、スター・…

「ウルトラマンメビウス」2006〜2007

06年から1年間にわたり放映された全50話を通しで観てみる。作品単体としてはいろいろ弱点や物足りなさがあるのは致し方ないですが、“ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作品”の看板に偽りはない。40年前に小さなTV映像にかじり付いていた少年たちが、当時…

いつかは来ると思っていた、その日は何気なくやってきて過ぎていく

森繁久彌氏がこの世を去りました。親しみを込めて「モリシゲ」と呼び捨てにさせてもらう。面識などなかったけれど、森繁サンにオヤジ的な親近感を抱いて育ったお尻の世代に位置する私には切ない昨日でした。 今年8月に、私にとって爺ちゃん的存在だった松林…

「スペル」2009

私は元来ホラー映画を鑑賞しない。スプラッターなどもってのほかで、怖い映画は避けまくっている。これはもう生理的な反応なので致し方がない。もっとも、残虐描写が少ないショッカーであれば大丈夫なので、ジョン・カーペンターの「ハロウィン」1978が私に…

「曽根崎心中」1978

「この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、夢の夢こそあはれなれ。あれ数ふれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め、寂滅為楽と響くなりー」 近松門左衛門の傑作浄瑠…

「幸福」1981

またまた市川崑です。1981年に制作された「幸福」。エド・マクべイン87分署シリーズ「クレアが死んでいる」を原作に、当時人気絶頂の水谷豊を起用して描いた刑事もの。小さな傑作。刑事ものながら、市井に生きる等身大の人間ドラマの構え。水谷演ずる村上刑…

「ダウト〜あるカトリック学校で〜」2008

メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンが真っ向勝負した演技合戦。舞台劇の映画化として圧倒的な見応え。戯曲を書き舞台を演出したジョン・パトリック・シャンリィ自らが脚色・監督しただけあって、シナリオの狙いを完璧に映像化しています。…

「悪魔の手毬唄」1977

またしても市川崑です。1960年代に既に日本映画の巨匠となっていた市川監督が、70年代半ばから急に大衆娯楽ミステリーを手がけます。しかも原作は横溝正史の金田一耕助もの。当時は松本清張に代表されるリアル社会派推理が映画原作としても主流で、江戸川乱…

「その木戸を通って」1993(2008)

私は時代小説の熱心な読者ではないですが、山本周五郎と滝口康彦は愛読しています。周五郎の短編集「おさん」(新潮文庫)はとりわけ好きな一冊で、幾度も再読するので随分傷んでしまいました。その中に収録された一篇が「その木戸を通って」。これが映像化…