女優 大地喜和子について

昨日、都内某所で若い女性と会って話をする機会があったのですが、この女性の表情や雰囲気が誰かに似てるなぁと思いました。
話をしているうちに、頭の中でイメージの引き出しが開いてきて、しっかりと像を結んだのが、そう、大地喜和子だったんです! 私的な印象でしかないのですが、まるで20代の大地さんそのものって感じ!

嬉しかったですね〜。私、ファンでしたから。
あの独特の“いい女”感いっぱいの大女優の面影を持った若い女性が目の前にいたんですから。
しかしながら当然の話なんですが、その女性にこの女優の名前を告げても知りませんでした。嗚呼。

そうなんですよね。92年10月13日なんですから、大地喜和子が亡くなったのは。
ついこの間のように思っていましたが、もう13年以上が経過しているのです。
演じている彼女を明確に記憶しているの世代の下限は、年々上昇しているんですよね。

例えば40代以上にとって、ドラマ「白い巨塔」と言うと、田宮二郎山本学と大地喜和子の3点セットなんですが、若い子達に聞くと、唐沢寿明江口洋介黒木瞳になりますね。当たり前ですが。
時間は容赦なく流れていくものですが、ちょっぴり切ないです。

私生活でも恋多き女性だったという大地喜和子の代表作はいろいろあるでしょうが、私が敢えてひとつ挙げるとしたら、やっぱり寅さんのマドンナを演じたやつですねぇ。
第17作「寅次郎夕焼け小焼け(76年)」。
コロコロと明るく笑う陽性の魅力と、男に騙された悔しさと情けなさを陰で独り噛み締めている耐える風情が、コンパクトにフィルムに納まっています。
こんな芸者さんと旅先で出会えたら、寅さんでなくとも「お前と所帯を持とうと思ってよ」って軽口混じりに呼びかけてみたくなっちゃいます。ホントに。

こんな魅力的な女優が、これからトップに立って代表作をいくつも打ち出していけるだろう矢先に急逝してしまったこと、まったくもって残念です。
と言いながら、かくいう私も、目の前に似た女性でも現れなかったら、思い出してもいない訳で、忘却の片棒は自分も確実に担いでいるのです。

どんな魅力的な人間もいつかはいなくなってしまいます。そして時間は誰にも公平に流れていきます。せめて、その魅力を受け止めたことのある者が、忘れないでいることしか、それに抵抗する術はないのかもしれないです。

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