今夏の「時をかける少女」は大傑作!

映画検定2級、無事合格しました。

昨日合格通知が届きました。
合否連絡など久しぶりだったので、ちゃんと届くまでなんとなくそわそわしてしまいました。
12月に2回目の試験が実施されますが、1級にトライするかどうかちょいと考えたいと思います。


そんなこともあって、この夏は久しぶりに映画を観ている夏です。
なかなか劇場には足を運べないのですが、これは観ておくべきと断言できる1本がありました。

細田守監督作品 「時をかける少女」 です。
http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/

時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

時をかける少女 NOTEBOOK

時をかける少女 NOTEBOOK

筒井康隆の不朽の名作ジュヴナイル「時をかける少女」は65年の発表。
その後、最初の映像化はNHKの少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」でした。
自分はこれをリアルタイムで観ています。だからこの物語の鑑賞には年季が入っています。

で、83年の大林宣彦監督・原田知世主演の映画が決定打になっていました。
自分はこれを劇場で複数回観ていますし、DVD所有者でもあります。
自分的な映画ベストを選出すると、かなりの上位に出てくる作品であります。

そんな思い入れがあるものですから、その後幾度も繰り返された映画化・TV化には、殆ど触手が動きませんでした。
実際、83年版を凌駕するクオリティはなかったみたいですし。

時をかける少女 [DVD]

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ただ、今度はアニメーション化とのこと。
しかも、ヒロインを“芳山和子”ではなく、よりアクティブな“紺野真琴”にするという新設定を行っているとのこと。
しかも、監督は細田守だとのこと。
これは何としても観ておくべきと思いました。


細田守は、例の「ハウルの動く城」途中降板で有名になりましたが、商業アニメの世界では新エース級です。
私は、一昨年、TVアニメ「おジャ魔女どれみドッカーン」40話・49話を観て、その只者ではないクオリティの高さに感動していましたので、どんな作品が生まれるかと興味がもたげた訳です。
http://www.toei-anim.co.jp/tv/doremi_D/frame03.html
http://www.toei-anim.co.jp/tv/doremi_D/frame03.html
(※このTVアニメ、未見の方は騙されたと思って観てごらん。お子様向けの女の子アニメでここまでの世界が描けるんですから)。

で、劇場で観てきたのですが、期待以上の作品でした。
青春映画として、見事な出来栄えです。
アニメーションならではの表現力が駆使されていますが、実写とかアニメとかの区別に関係なく、良い映画でした。

83年版は、SFの筋立てを尾道という旧い日本の風景の中に置いた上で、死と喪失の物語として心に染み込ませるものでした。それを原田知世の輝かしい一時期の肉体を通して描かれた傑作でした。

本作は、その土俵から思い切って離れ、まさに現代の十代の青春の物語としてしっかりと立っています。
今度は、前を向いて生きていく前進の活力を性根に据え、その上でさわやかな感動と感傷を描きます。
青春映画の、まさに王道です。
アニメーション映画としても、もはや切れ味を失った宮崎御大のジブリ作品の停滞感を突き抜けていく、未来への期待と輝きがあります。

こんなにうまく成立するリメイクもめったにあるもんじゃありません!
思春期から青年期の人たちに、男女問わず是非観て欲しい、これはもうしっかりとした文学です!
音楽も、主題歌含め出色です。

時をかける少女 オリジナル・サウンドトラック

時をかける少女 オリジナル・サウンドトラック

多くの人に見て欲しいので、内容面には触れません。
まずはご自身で、観て、感じて欲しいと思います。


ただ、大変に残念なのは、これだけのクオリティの映画が、全国でほんの少しの劇場にしかかかっていないことです。
公開される劇場のない県もありますので、ここで“多くの人に”と言っても、現実はビデオ化されるまでは難しいとも言えるのです。
東京においても、座席数218テアトル新宿1館のみでの公開です。
都内で、たった1スクリーンなんですよ!(06年7月末時点)

夏休み映画として、大作ファンタジーものが2作品、大々的な宣伝と共に、多くの劇場で公開されています。
大勢の若者が詰め掛けてそれらはヒットするでしょう。

でも、10代の若者の物語の傑作が、殆どの同世代にリアルタイムで見せてあげられない現実を、大人たちは反省しなければなりません。

宮崎アニメがヒットしたから、10代はファンタジー映画を観るものだから、等々、過去の成功体験でしか商業ベースの流れを組もうとしない態度が、日本映画の可能性をいまひとつ広げられないでいる要因ではないかと思います。

いずれにせよ、作品は観た人の評価によって、その存在意義が決まってきます。
もし、このページをご覧になって、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ劇場に足を運んでみてください。
貴方は鑑賞料金を無駄にしたと思うことはないと思います。