最近のDVD鑑賞状況:今敏監督に注目を

東京も猛暑が続いています。7月は雨続きだったのに極端です。

心のありようとは不思議なもので、先月から急にいろんな映画を観たくなってしまい、せっせとレンタル通いをするようになっています。もっとも鑑賞時間は限られますので大した本数は見られませんが。

普段劇場にはめったに行きませんので、話題の映画という奴も、半年から1年遅れで確認するのが常になっています。最新の話題にはついて行けなかったりします。

さて、7月〜8月前半で観たDVDは以下の通りです。

「夜がまた来る」 「機動戦士Zガンダム 星を継ぐもの&恋人たち」 「青春デンデケデケデケ」 「アフリカの女王」 「鬼が来た!」 「天井桟敷の人々」 「さらば、わが愛 覇王別姫」 「ミリオンダラー・ベイビー」 「ミスティック・リバー」 「太平洋の嵐」 「地球防衛軍」 「モンスター」 「トッツィー」 「NANA」 「スリーピーホロウ」 「映画ONEPIEACEオマツリ男爵と秘密の島」 「耳に残るは君の歌声」 「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」 「東京ゴッドファーザーズ」 「殺人の追憶」 「ほえる犬は噛まない

我ながら、観方が滅茶苦茶です。
日韓中仏米アニメ特撮アカデミー新旧取り混ぜで、第三者には何故このラインナップでレンタルしたのかわからないでしょう。でも教えてあげません。

久しぶりに見直したものもありますが、つくづく便利な世の中になったものです。ありがとうTSUTAYA。ありがとう半額クーポン。


この中で、今日はこの1本をピックアップしてみます…。

東京ゴッドファーザーズ」2003年 今敏監督

日本のアニメーションのレベルの高さが社会的にも認知されてきているとはいえ、一般の方々の認識はせいぜいジブリブランドくらいのもので、その上、認知拡大のきっかけが「風の谷のナウシカ」だったものですから、“優良アニメ=異世界ファンタジー”といった刷り込みが社会全般に行われています。

故に夏休みアニメ興行合戦も、「ゲド戦記」VS「ブレイブストーリー」に商売関係は集中し、コンテンツとして抜きん出ている「時をかける少女」(細田守監督)には世の大人たちは見向きもしない、という状態が生まれている訳です。
これでは、日本のコンテンツ産業がハリウッドに対抗する日は遠いと言わざるを得ません。


東京ゴッドファーザーズ」も、本来ならばもっともっと社会的に注目されて良いはずの映画です。
1本の映画として、非常に完成度の高い傑作です。

今敏(こん さとし)監督は寡作な方なのですが、「パーフェクトブルー」(97年)で注目を集め、続く「千年女優」(01年)で文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞を受賞しました。
その「千年女優」に続いて手がけた作品が「東京ゴッド…」になります。


今監督の作風は、実写映画に相応しいような素材を、あえてアニメーションで描きながら、観てみると成る程これはアニメでなくては表現できない世界だと強く感じさせられる、独特のリアリズムとファンタジー性を併せ持っているものです。

「東京ゴッド…」の主人公たちはホームレスで、およそエンタメ映画の、それもアニメの主役らしくはありません。ところがところが、実写で描くとどうしても生々しくなりすぎる設定が、非常にファンタジックに見せられてしまい、無理なく物語に入っていけるのです。

そして、監督(脚本も担当)は、物語の中に、敢えて“偶然性”というタブーを仕掛けているのですが、これが見事に面白さにつながっていて、捻りが成功していると思います。
未見の方のために具体的にはコメントしませんが、今監督は、ビジュアルセンスのみならず、ストーリーテラーとしてもハイレベルなところにあるように思います。

この「東京ゴッドファーザーズ」、一本の映画としては、現在公開中で観た人からは極めて高い評価を得ている「時をかける少女」よりも高い完成度を持っている作品です。
まあ、両者を比較することに意味はありません。前者が冬の傑作ならば、後者は夏の傑作といった捉え方でよいのではないでしょうか。
今後の日本のアニメ映画は、今敏監督と細田守監督の2人が牽引していくものと、私は思っています。
いや、もう一人、原恵一監督を入れて3人ですね。失礼しました。


今監督の期待の次回作は「パプリカ」となります。所謂冬休み映画になりそうですね。
時をかける少女」も「パプリカ」も、同じマッドハウスの制作ですので、映画館で予告をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
興味を持たれた方は、冬休みまでにぜひ「千年女優」と「東京ゴッドファーザーズ」を予習しておかれることをお薦めします。

千年女優 [DVD]

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