重量感あるラブストーリー:「モンスター」

シャーリーズ・セロンの強烈な役づくりに圧倒されるこの映画、ようやくDVD鑑賞です。

感動しました。

モンスター 通常版 [DVD]

モンスター 通常版 [DVD]

実話に基づく救いのない物語なので、観終わって爽やかになどなれませんが、良質な文学としての映画を観た感動があります。

ヒロインが重ねた犯罪は確かに許されざるものなのですが(映画もそこは突き放して描ききっています)、彼女がそうせざるをえなかった心情がシナリオと演技と演出の総合力で、きちんと観る側に伝わってきました。


救いのない環境で生きてこざるを得なかったヒロイン(セロン)が、初めてピュアな恋愛感情を抱いた相手は年下で経済力のない少女(敢えてそう表現します)だったことで悲劇の幕が開き、破局へと突き進んでしまいます。

映画は、犯罪実録というモチーフを扱いながら、2人の出会いとときめき⇒結ばれる高揚感⇒小さなズレが破局に至る過程の3段階を余すところなく描き出します。
この映画は紛れもないラブ・ストーリーなのです。


アカデミーの主演女優賞を採ったセロンの演技は文句なしですが、私的には、ヒロインの心を翻弄した相手の女性を演じたクリスティーナ・リッチを高く評価します。素晴らしいです。

セロンの演技が活きるためには、リッチ演ずる相方の魅力と非情さが、終始説得力を持って維持されていなければなりません。彼女は受けの演技という状況で、それをきっちりこなしてくれています。

確かにヒロインを追い込む小悪魔的な存在に結果的にはなるのですが、彼女自身にも悪意がある訳でなく、その裏切りの行為にすら一定の共感を覚えてしまう…、単純な善悪二元論では片付かないからこそ、悲劇が悲劇として記憶されるのです。

冒頭のスケートリンク、中盤の遊園地、終盤のバス停と裁判所、それぞれのシーンにおけるリッチ嬢の演技は、観客をセロンの視点に固定させ、セロンの感情のタガが外れる様子を同時体験させることに成功していると思います。

あぁ「キャスパー」の知的でやや影のある可憐な少女が、こんなにも成長してくれていたのか、と感慨深くもありました。


この映画の監督は女性です。
監督と2人のヒロインとの共同創作が、見事に開花した作品だと思います。



クリスティーナ・リッチの代表作は実は結構未見です。
  ジョニー・デップとの共演が目立ちますね。
   「耳に残るは君の歌声」(これはチェックした)もそうでした。
  そういえばこれも女性監督でしたね。