「イヴの総て」 : クラシックはやっぱり凄い!
韓国ドラマではありません(あっちは「イブのすべて」)。
1950年のアカデミー作品賞受賞。
脚本と監督はジョゼフ・L・マンキーウィッツの大傑作。
ちょっぴり不幸で、無垢で健気な演劇ファンのイヴ(アン・バクスター)。その秘めた野心に周囲が気づいた頃、彼女は他人を踏み台に成功の階段を駆け上がっていた・・・。
いわゆる“悪女もの”と呼ばれるドラマの殆どは、この映画の亜流でしかありません。 まさに基本、お手本、テキストです。 見応えたっぷりの骨太のドラマです。
- 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
- 発売日: 2005/02/04
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映画の後半、レストランの化粧室のシーン。 ヒロインがその本性を全開にする場面の演技と演出は、ホラーでないにもかかわらず、半世紀を経てもなお観る者に戦慄をおぼえさせます。
しかし、この映画の凄さはそれだけではありません。人物描写の厚みがハンパじゃないのです。
安直な演出家なら、ヒロインであるイヴの悪女っぷりを追いかけていくでしょう。
しかしこの映画はそんなことはしません。140分の上映時間の半分以上を費やして、イブに踏み台にされる大女優マーゴ(ベティ・デイビス)を徹底的に描写していきます。
忍び寄る老いを自覚した大女優の、高慢と焦り、破綻と絶望、そして再生が見事な迫力で描かれています。
それにもかかわらず、いや、そうだからこそ、画面に写っていないイブの存在感が観客に説得力を持って迫ってくるのです。
通常の劇映画2本分に匹敵する人物描写情報が、重層的に一本の作品に放り込まれているにもかかわらず、分裂も破綻もせずに1本の本筋にきちんと絡み合っています。
まさに濃密な人間ドラマ。その厚みと迫力に圧倒されます。
確かに現代の眼で見れば、ラストの暴露とオチにもう一ひねり欲しいところではあります。しかし、そう感じるのも、この映画のバリエーションを数々観てきた経験から、刺激に慣れてのないものねだりでしょう。
やはりできるだけ若いうちに、ジャンルの古典は学んでおくべきと思います。
古いものを侮ってはいけません。クラシックの持つ凄さを見逃してはいけないと再認識しました。