好きになれない映画 「フォーガットン」

意外な展開でひきつけるサスペンススリラー。
90分のコンパクトなつくり。
途中飽きることなく面白く観られました。

が、好きにはなれない作品でした。



不慮の事故で9歳の息子を亡くした悲しみから立ち直れないでいるヒロイン。
しかし、家族を含めて周囲は息子の存在自体を否定し、どうやら彼女はひどい妄想を抱える心の病にあるらしい・・・。一体真相は何なのか?


ヒロインの陥っていた謎の真相が実は、という物語の肝のアイディアが勝負の映画。 それに“やられた”と言わせたいために予告編やらキャスティングやらのすべての雰囲気づくりがなされています。

だから、親子の情愛を芯に据えた“地に足のついた”ミステリーを本気で期待して観ると一気にひっくり返されますので、“やられた”と思えなければ“なんだこれは!?”ということになります。
それで評価が大きく割れているのでしょうね。
何せ本当に“地に足がつかない”のですから(笑)。


こういった仕掛けは嫌いじゃないです。だからその点では裏切られた感はありません。
でも、今回はどうも・・・。

どうやら私は、ヒロインの息子に対する愛情の描写に何のひねりもないことが不満のようです。

この作品、大前提として「親子の愛情の絆はこの世で最も強いものなんですよ。皆さんそうでしょう?」という単純で常識的なテーマがあります。
そのシンプルな力強さが物語を支える訳ですからそれでいいのですが、あまりにステロタイプではないか、と。


確かに子どもを持つ親の愛情は強いですが、それでも人間の心理ってもっと複雑なものがあるはずです。
“自分は本当にわが子を愛しているのだろうか?”といった疑いを自らにかけるくらいのことはあるのではないかと思います。

ですから、周囲から妄想だと否定されたヒロインが、自らを一度でも疑うような描写が入っていれば、私はもう少し感情移入できたかもしれません。

似たようなプロットである「フライトプラン」は未見ですが、そちらはどうなんでしょうね。


後半の展開で見せるビジュアルショックは印象的で面白いです。
思わず笑ってしまいますが。