太田裕美 「セカンドラン〜二番館興行〜」 をめぐって

退屈な講義ならサボタージュ   二番館 2人で通ったものさ
プログラム抱きしめてワクワク   メリーゴーランド待ってる少女みたいだったね
試験中も学食で情報誌   ひろげては 目あてに印をつけて
真っ白な教科書を抱えて   図書館通い それさえ君となら愉快だったよ

      好きだよ こころのスクリーン 今も君がヒロイン
      逆光線で笑顔が見えないよ 辛いジョークさ  ねぇ こころ変わりなんて・・・
                                  (「セカンドラン〜二番館興行」) 


さすがに歌詞を全て記す訳にはいきませんが、少しはテイストを感じていただけましたでしょうか。

1981年12月リリースのアルバム「君と歩いた青春」の1曲目でした。

太田裕美は74年デビュー。名作「木綿のハンカチーフ」は75年12月発売。
中学の終わりから高校時代、彼女の歌をよく聞いていました。

女性への受けはよくなかったですが、アイドルに分類されながらアーティスト系(当時はニューミュージックと呼ばれてましたが)の楽曲に恵まれ、独自の立ち位置を確保していたシンガーでした。


そう書いても、若い人には何のこっちゃという感じでしょうねえ。

今はアイドル歌手とかシンガーソングライターとかいった分類が意味をなしていませんので、よくわからないとは思います。
普段邦楽など馬鹿にして見向きもしない大学生たちも、南沙織太田裕美だけは許すといった、そんな時代がありました。


この歌が収録された「君と歩いた青春」。Amazonのカスタマーレビューに以下のようにあります。


「セカンドラン」が聴きたくて  2003/6/25
このアルバムの1曲目。リアルタイムで1度だけ聴き、断片的に強い印象を持っていました。ベストアルバムの類に何故か入らず聴く機会がなかったのですが、ふと思い立って購入…。結果、彼女の全曲中、極めて大切な1曲に。“名画座”が殆ど死語である現在、この詞の世界は成立しないでしょう。しかし1980年前後に東京で大学生活を送った者には切な過ぎるリアリティです。情念を剥き出しでなく、切ないシチュエーションに包み、且つ柔らかな透明感をもって味合わせてくれたのがこの時期の彼女の歌でしょう。そう思います。


70年〜80年代前半。レンタルビデオやDVDのかけらもなかった頃。
映画館に足を運ぶ行為は、現在よりももっと気軽でありながら、もっと特別な感情と感傷を抱き合わせたものでした。

早稲田松竹、文芸座、佳作座、ギンレイホール並木座・・・etc.etc.


これ以上何かを書いても、何だか嘘になってしまいそうです。
こういった感傷もありますということです。


※1 『二番館』とは、ロードショー公開を終えてしばらくしてから料金を割引いたり2本立てにしたりして割安で見せてくれる格落ちの映画館のこと。『名画座』に近い。イメージしづらかったらご両親にでも聞いてみよう。


※2 上記のカスタマーレビュー、3年前に書いたのは私です。



太田裕美白書

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