何とも素敵な 「下妻物語」 の幸福感!

kaoru11072006-09-16

こんな愛すべきハイセンスな映画を見逃していたとは!
公開からの2年間を無駄に過ごした気分です。
本当に食わず嫌いはいけません。大切なものを見失います。


監督の中島哲也氏は、サッポロ黒ラベルの卓球編(山崎努豊川悦司のスローモーションの奴)を手がけた人。

私は嶽本野ばらの原作は未見ですが、物語世界にどっぷり浸ることができました。

最初から最後まで笑いっぱなしの細やかな演出が効いています。
面白おかしく、でも決して下品に堕することのない品格に貫かれています。全描写の好感度が高いです。


何よりも2人のヒロインが素晴らしい。
深田恭子はあまりちゃんと見たことがなかったのですが、センスの良さが伝わってきます。
孤高の孤独感と、そこから出て行かねばならない時の戸惑いが感受性豊かに表現されていました。

ロリータファッションには何の興味もありませんが、画面上の彼女のファッションは楽しく可愛いです。確かに華がありますね。

下妻物語 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]

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前半でギャグに彩られたショートエピソードを並べてヒロインたちのプロフィールを語った後、深田恭子演ずる桃子が土屋アンナ演ずるいちごの特攻服に刺繍を施すエピソードからドラマがうねりだします。

別に展開はシンプルなのですが、孤高のヒロインの動き出してしまった気持ちの止まらなさ加減がすごく伝わってきて乗せられます。

青春前期の肥大した自我に閉じたところから、他人にとっての自分の価値に気づき、自分の外側の世界に開いていく変化。そうした自己を確立、いわば人間の2度目の誕生という概念が、お説教臭さなど微塵もなく描かれています。

そう書くと堅苦しく思われますが、映画は徹底的な娯楽映画です。退屈など一切しません。


まったくストーリーを知らずに見ましたので、クライマックスのフカキョンの大立ち回りと啖呵がストレートに入ってきました。いやいや溜飲が下がる思いです。カタルシスがあります。


観終わって残るのは、ヒロインふたりのとても愛すべき残像。
幸せな気分になれること請け合いです。


極端に異なる個性のダブルヒロインものとしては「NANA」の方が流行りですが、私はこちらに軍配を上げます。
本作でキャラクター紹介ができた訳ですから「下妻物語2」とか続編を制作するのもよいのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか?