「バッテリー」 孤高の少年像を読む

kaoru11072006-09-28

あさのあつこ作の「バッテリー」。

気になりながらも読んでなかったので、Ⅰ〜Ⅲを通読。
Ⅳ〜Ⅵは、週末に図書館で借りようと思っています。
ファンの方々には今更という感じでしょうが、コメントします。



成る程、人気がある訳です。
主人公の造形が素晴らしい。


青春小説に、こんな自意識の肥大した少年像はめったにないでしょうね。
とっても新鮮でした。

スポーツを扱い、且つ極めて高いレベルの才能に恵まれた少年を主人公にしながら、森絵都氏の「DIVE!」とはまた違った心理を描いてくれます。
こっちもなかなか面白い。


己の肉体とそのパフォーマンスの高さに絶対の信頼と自負を持つ主人公の少年巧(たくみ)。
ピッチャーとしての力量をいかにして高めてきたか、いかに高める努力をしているか、といった描写は微塵もありません。

巧は既に高みに達しているし、能力を向上させる過程もストーリーには無縁です。
物語は、現実の中で、彼の孤高の精神がいかに貫けるのか、という一点に読者の興味を絞って読ませてくれます。


これって、つまりは “ハードボイルド”ってヤツです。

殺人も犯罪も、拳銃もバーボンも、そんなものなくったってハードボイルドは描けるのです。


こういう精神の持ち主を主人公にした小説は一杯ある訳ですが、大抵はしっかり人生経験を踏まえた大人の男です。
それを、この小説では若干12歳〜13歳で設定しています。
とんでもない設定です。

しかし、そこが小説のマジック。
超小学級、超中学級の力量を誇る孤高のピッチャーという設定が、説得力を持ちます。


と解説を始めると、とっても文章量が嵩みそうなので、このへんでとどめます。
まだ最後まで読んでませんし・・・。

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (角川文庫)


読了したら、このページ、更新します。


それにしても、この心理描写のユニークさが魅力の小説を、どう映画化するのでしょう?

滝田洋二郎監督作品なので、そうそう安易で陳腐なものにはならないと思いますが、小説の魅力が表現できるのか、正直危惧します。



⇒Ⅳ巻以降を読了しました。(10.21.)

うーん。3巻くらいまでで止めておけばよかった、というのが本音。

前述の通り孤高の少年のハードボイルド小説だったものが、物語が進むうちに、周囲の少年たちの
心情の吐露が延々と続いていく展開になっていきました。
他の方はどう感じるかわかりませんが、私には面白いとは思えませんでした。
同じような描写がループし続け、正直いらいらさせられました。


どうやら作者は物語の後半において、登場人物たちによる主人公をめぐっての“恋のさやあて”を描きたかったようです。

もちろん露骨な描写はありません。あくまで野球の才能をめぐる感情の高ぶりとして描かれますが、どうもこの延々と繰り広げられる少年たちのこころ模様は、まさに恋愛感情そのもの。

物語の前半では、そういうものがほんの少しの隠し味だったと思いますが、後に行くともうそればっかり。
それがお好きな方もいるでしょうが、私にはうんざりでした。