「雲のむこう、約束の場所」 新海誠の若さを観る

kaoru11072006-10-10

実質的なデビュー作「ほしのこえ」を、初版DVD(高かった)を購入して観てから3年が経過していました。


新海誠の劇映画デビュー作「雲のむこう、約束の場所」をようやく観ました。

日本が南北に分断された、もうひとつの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキと白川タクヤは、同級生の沢渡サユリに憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された謎の巨大な「塔」。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、小型飛行機を組み立てる2人。ところが中学3年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう。うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、それぞれ別の道を歩き始めるのだが…。
2002年『ほしのこえ』で映像界に鮮烈なデビューを飾った新海誠監督の、初長編映像作品。
Amazonの紹介文引用)


もう、突っ込みどころは沢山あると思います。

個人的には背景の綺麗さ、描きこみのレベルの高さに比して、人物デザインがラフ過ぎて、今ひとつ感情移入できないのが終始気になってしまいました。

また、女の子のキャラクターに主体性が乏しいというか、男の子が夢想する理想の女の子像レベルにとどまっていて、人物像の魅力に乏しい点も難点です。

質的な完成度の点では、発展途上と言わざるを得ないでしょう。


しかしながら、私はこの若き作家の感覚は好きです。結構、共感度の高い物語世界を描いてくれると思っています。


それは、若さゆえの甘さかもしれませんし、過剰なセンチメンタリズムと言えるかもしれません。
でも、私はそういうのが大好きだったりします。

まあ、こんな吐露は匿名のブログでもなければ気恥ずかしくってできませんが・・・。



新海監督が、独りでPCに向かって作り上げた「ほしのこえ」の方が、尺も短い分だけそういうセンチメンタリズムがストレートに味わえたように思います。

スタッフも増えたこの作品は、作りこみに厚みが加わり一般受けする要素も増えましたが、その分魅力が曖昧になったかもしれません。


今後、この物語世界をより広い層に受け入れさせるのであれば、アニメにこだわらずCG多用の実写映画はどうでしょうか?

この監督、失礼を省みずに言わせてもらえれば、人物キャラの描き込みにはそれほど執着があるようには思えません。
ならば、人物は俳優を起用して、物語世界全体を作りこんでいくことにエネルギーを割いてみてはどうかと考えます。



この若き才能の存在は、まだまだ一部のアニメファンの認知にとどまっていると思います。
関心を持たれた方は、一度チェックしてみることをお薦めします。


ほしのこえ [DVD]

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