「セルラー」
久しぶりに、キリリと引き締まったサスペンスを観させてもらいました。95分とコンパクトな長さ。軽いショックのある冒頭から一気にに物語に引き込み、小気味良いアイディアのつるべ打ちでラストまで駆け抜けさせてくれる面白さ。のど越し爽やかな端麗辛口の酒のようです。
- 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
- 発売日: 2005/08/26
- メディア: DVD
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幸せな主婦である理科教師ジェシカは突然見知らぬ男たちに拉致監禁されてしまう。閉じ込められた部屋で怯える彼女は、壊れた電話機で外部と接触を試みる。奇跡的に通話できた相手は、少々軽薄な大学生ライアンの携帯だった。最初はイタ電と思った彼も、聞こえてくる音声から事態を認識し孤軍奮闘を開始する。進行と共に謎が明らかになるミステリーの面白さ。通話を切る訳には行かないサスペンス。あらゆる設定がきめ細かな伏線になる作りこまれたシナリオ。コンパクトなサスペンス映画の傑作。
監督のデビッド・E・エリスは、今公開中の「スネーク・フライト」も演出。
他の作品は未見ですが、きっちりと面白い映画を生み出す職人芸に秀でた監督と見受けました。
見事な脚本を担当したのはラリー・コーエン。
同じく電話を使ったサスペンスの秀作「フォーン・ブース」の脚本もこの人。
好みもあるでしょうが、私は「セルラー」の方が好きです。
手に汗握って観終わってた後は、違和感が残らずすっきり爽やかという感じで、娯楽作としては高得点でしょう。
キム・ベイシンガーをヒロインに据えていながら、変な恋愛話の横道にそれたりせず、きちんと軸をぶらさない姿勢が好感持てますし、出演者の演技も皆見事。軽妙でありながら知的な雰囲気を漂わせてくれています。
こういう面白さは、昔でいえばアルフレッド・ヒチコック作品の味わいだと思います。
実際、ヒチコックが現存していたら、絶対に携帯電話を使ったサスペンスを撮るはずです。
そんなことを思わせる出来栄えでした。
劇場公開時には、あんまり話題にならなかったのでしょうか?
この映画のプロット、もっと低予算で作ろうと思えば、携帯で話を聞いてしまったライアンのみの描写で描くこともできると思います。きっと、それはそれで十分面白そうです。