「ひまわり」1970
おそらく私の最も愛するラブ・ストーリー。久しぶりに再見です。
画面いっぱいに映し出されるウクライナ地方のひまわり畑。そこにかぶさるヘンリー・マンシーニ入魂のメロディー。“哀切”という感情を具象化したひとつの事例。
- 出版社/メーカー: 東北新社
- 発売日: 1999/12/24
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イタリアの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ晩年の代表作。ベストテンものには惜しくも入っていませんが、興行的には成功を収め、観た人の記憶に残る映画でした。
第二次大戦下、ジョバンナ(ソフィア・ローレン)はアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)とナポリで結婚。幸せな日々はアントニオがロシア戦線に送られたことで途切れる。終戦後も待ち続けるジョバンナだったが彼は戻ってこない。諦め切れない彼女は夫が死線を彷徨ったというウクライナに旅立つ。だが、彼女を待ち受けていたのは現地の若い娘と所帯を持っている夫の姿だった。夫の命を救い、健気に愛する娘を見たジョバンナは、夫と目を合わせただけで立ち去ることしかできなかった。月日が流れ、新しい生活を送るジョバンナに一本の電話がかかってくる・・・。
切ない愛情を胸に押しこめるようにして人生に向き合うヒロインをソフィア・ローレンが見事に演じています。彼女が感情を迸らせる時、観客の切なさもピークに達します。列車への飛び乗りで泣かない人はいますか?
二枚目だけど情けない男を演じさせたら世界一の名優マストロヤンニ。自分が年を重ねてから再見すると、彼の名演がよくわかります。昔はわかりませんでした。彼の抑制された演技の持続が物語の重石になっているからこそ、ローレンの泣きが際立つことになっています。
さすがはネオ・レアリスモの巨匠デ・シーカ。画面の隅々に配慮が行き届いています。
例えば映画の中盤以降、戦後のアントニオを演ずるマストロヤンニは、ラストシーンまで微かに片足をひきずっています。そんなことは台詞でも触れませんし、足のアップが映る訳でもありません。
何の説明もありませんが、凍傷により足の指先が欠損しているのかもしれません。極寒のロシア戦線の悲惨さが伝わってきます。
もう36年も前の映画になってしまいました。若い世代の方が観るには、多少の背景説明が必要かもしれません。それでも、世代を超えて伝えて行きたい映画です。ヘンリー・マンシーニがイタリアに招かれて作曲したテーマ曲。私にとって、映画音楽のベストメロディー。※因みに、次点は、ミッシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」です。