「刑事コロンボ 別れのワイン」1974
購入したDVD−BOXから、少しずつ観始めています。
久しぶりの再会になりました「別れのワイン」。NHKでの放送が1974年。再放送が何度かあって、おそらく76年に観ていると思います。ちょうど30年ぶりの再会。
私はシリーズの中で、このエピソードが最も好きです。
コロンボのストーリーは偉大なるワンパターンなので、粗筋を記す必要もないでしょう。今回の犯人役は名優ドナルド・プレゼンス。「007は二度死ぬ」の敵役が有名でした。
この犯人はワインをこよなく愛するゆえに、彼のワイナリーを売却しようとする腹違いの弟を殺害してしまいます。その隠匿のためにトリックを弄するのですが、そこをコロンボに衝かれてしまうという展開です。
どのエピソードも十分面白いシリーズですが、この「別れのワイン」の素晴らしさは、犯人の人物像の彫りの深さにあります。世俗のあらゆる事物を超越してワインを愛し、その目利きとテイスティングは世界でもトップレベルにある。犯罪であれ何であれ、彼の行動原理はすべてそこに根ざしているというユニークさを、プレゼンスが生き生きと演じて味わい深いものがあります。
加えて、今回のコロンボは捜査と推理を重ねる中で、この孤高の犯人に対し次第に敬意を払っていきます。この敬意の存在は、終盤に犯人を追い詰める“詰め”の部分に生かされ、ラストの展開の面白さと感動をシリーズ屈指の出来栄えに持っていくのです。
いやはや、TVのみではもったいない。ブローアップして劇場公開しても耐えられるくらいのクオリティを持っていました。
脚本が絶妙なんですよね。ワインを愛してやまない犯人が、殺害のために使用したトリックと気まぐれな天候の偶然ゆえに、その大事な大事なコレクションを駄目にしてしまうという展開が見事。
しかも、その駄目さ加減は凡人にはわからないレベルであり、この犯人自身のような超絶的愛好者にしかわからないものであるという皮肉と、そこを衝くことで自供に追い込むコロンボの手腕の華麗さが際立ちます。
そう、このエピソードのラストにおいては、犯人はもう逮捕されることすらどうでもよくなってしまいます。法を犯すか否かといったボーダーを超越する狂気を抱く人物像があり、それにコロンボも観客も共感しうると言う設定にはうなるしかありません。
30年ぶりに見た割には、結構細部にわたって憶えていました。よっぽど私にとって印象深かったんでしょう。
このエピソードがあったから、コロンボファンになったのかもしれません。
因みに、どなたもそうおっしゃいますが、私も同じです。そう。このシリーズだけは、日本語吹き替え版で楽しませていただいています。
放映当初はカットされていたシーンもあって、そういう部分は石田太郎氏はじめ、幾人かの後継者の声があててありますが、やはり故小池朝雄氏の名調子あってのコロンボです。
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