「フラガール」2006
王道だと思いました。これは、かつての所謂“松竹大船調”ではないでしょうか。
効率よい興行的成果と質的水準の確保を両立するために、稀代の名プロデューサー城戸四郎氏に代表される製作者たちが構築した、作品のトーン&マナー。それは撮影所システムという作品量産体制の中で成立していった、日本映画の大衆文化としてのカラーだったと思います。それを、この独立プロ系の映画からストレートに感じることができました。
写真はすべて(c)2006 BLACK DAIAMONDS
昨年のキネ旬ベスト1をはじめ、大抵の映画賞は総なめにしている評価の高さには納得できるものがあります。後半ラスト30分くらいは感涙の波状攻撃の上、ダンスシーンのカタルシスと開放感・達成感が味わえます。これなら観客は堪能して劇場を後にできるはず。見事な出来栄えです。
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2007/03/16
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シネカノンという会社は、昨年は「ゆれる」という快作もリリースしており、独立系の制作会社としてはかなりの到達点に来ているのではないかと思います。冒頭に記しましたように、大手映画制作会社による撮影所量産システム崩壊後、こうした“庶民の日常の目線から輝くような哀感の断片”をすくい取るようなウェルメイドな映画作法が、このような形で再興してくるとは思いもよりませんでした。しかし、考えてみればこの会社、1999年に「のど自慢」をリリースしていました。その兆しは明確にあった訳です。李鳳宇(リボンウ)プロデューサーの手腕とセンスには素直にリスペクトします。
こういう映画が連綿と生み出されるには、高い志を持ったプロデューサーによる主導がどうしても必要です。大手映画会社がTV局とのタイアップと話題の文芸マンガの知名度に依存し、場当たり的な制作しかできなくなっている中、シネカノンのスタンスと商品力の持続は賞賛に値すると思います。
何だか、脈絡がなくなってしまいました。理屈はともかく、この作品、蒼井優のパフォーマンスレベルの高さが圧倒的です。商品力を支えきっています。彼女の演技については、圧巻のダンスシーンのみならず非の打ち所がありません。福岡出身なのに東北弁の台詞にも違和感がありませんでした(地元の方にはどうだったでしょうか?)。
彼女が光るので、松雪泰子も光るという相乗効果になっています。現在の若手女優の中では、明らかに抜きん出ていると思います。期待します。