「バトル・ロワイアル」2000

kaoru11072007-07-18

深作欣二監督の事実上の遺作。
石井紘基議員が鑑賞規制を問題提起するなど、その暴力描写が話題になった話題作でした。

確かに、本作のモチーフは殺し合いゲームという圧倒的な暴力を強制された理不尽下の中学生たち。極めて異常な状況を描く異端の創作であることは間違いありません。

しかしながら、鑑賞後はある種の爽やかさを覚える程のピュアな精神性を感じさせられます。おそらくそれは、深作監督の狙いでありテーマ意識だったのだろうと思います。

仁義なき戦い」を代表作として、“暴力”の渦中に身を置く群像劇が、深作欣二の生涯の創作テーマであったことは言を待ちません。
高見広春による原作を手にした時、これは自分が映像化すべき作品であると、彼が思ったであろうことは邦画に詳しい者なら誰しも容易に想像できることです。
それでも70歳という高齢で、これほどの青春群像劇を作り込めた事実には敬服せざるを得ません。深作健太氏の有形無形のフォローがあったことは確かでしょうが、この創作への情熱は凄いと思います。

ピュアな精神性と前述しましたように、個別具体的な暴力の混沌をもがききった果てでこそ見えてくる人間性の本質はあるのだと思います。悲惨やえげつなさを突き抜けた先にようやくすくい取れる精神の美しさは、やはりあるのだと思います。そして、本作も深作欣二の作風の本筋として、それが描き出された青春映画の佳作でした。

誤解していただきたくないのは、暴力を礼賛するという意味ではないということです。
所謂“焼け跡派”世代であった監督は、創作の原体験として暴力の風景を抱えていたのでしょう。そして、その中でこそ見つけられる人間の精神の価値を見つめたいと考えたのでしょう。加えて、それをも失わせてしまい得る暴力の理不尽と、そこから脱却できない人間の愚かさとエゴへの怒りと失意も覚えていたのだと思います。

バトル・ロワイアル [VHS]

バトル・ロワイアル [VHS]

そのような理屈を抜きにしても、本作の描写は非常に見応えがあります。
面白く物語を紡ぐという娯楽映画の基本がしっかりとしています。話題にもなり賛否もあった殺戮シーンも、それ自体の描写の節度は保たれており、末梢神経をいたずらに刺激するような生理的嫌悪感は注意深く除かれています。それこそ「仁義なき・・・」等と比較すれば明白です。これは演出プランとして、登場人物と同世代の中学生層に見せることを明らかに意識していたのだと思います。

そして、そういう描写の面白さ故に、役者の魅力が画面に開花しています。
本作でブレイクした柴咲コウタランティーノが見初めた栗山千明をはじめとして、城岩学園中学校3年B組生徒たちの表情の何と魅力的であることか。
勿論、それを際立たせたビートたけしの存在感とそのキャスティングはスマッシュ・ヒットものだったと思います。

本作はR15規制で公開されました。それ自体はいたし方ないことかと思いますが、映画鑑賞リテラシーに配慮した上で、中学生世代には是非見せたい映画だと素直に思いました。

例えばそれは、死に直面した人間は最後に誰と一緒に居たいと思うのか、自らを犠牲にしても誰を救いたいと望みうるのか、という人間の真実であり、表面的な友好も簡単に不信と猜疑心の闇に陥るという、これもまた人間の真実です。
それを映画の上で疑似体験することは、決して無意味なことではないと思うからです。

とはいえ、本作がどんな子どもにも見せられる推薦作であるかと言われれば否でしょう。
長崎県で数年前に起きた小学生によるクラスメイト殺害の加害児童が、本作に熱中していた事実はやはり事実として背負う必要はあるでしょう。深作監督も、きっと背負って墓に入る覚悟はあったはずです。
それでもなお、暴力を通して精神性を描くことにこだわらずにいられなかったクリエイターの魂を、私は感じたいと思います。

皮肉なことに、本作に問題提起をした石井議員は、その後理不尽な暴力によって殺害されるという映画のような顛末が待っていました。
世の中には、こういうことがいつでも誰にでも生じうるという諦観の果てに、それでも人間の魂の真実を見つめたい、そんな気持ちを抱き続けたいと思います。