「大決戦! 超ウルトラ8兄弟」2008

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟」2006の成功を受け、2年ぶりの劇場用ウルトラマン。ユニークな快作。小さい子にも見応え満載。どこがユニークかと言えばこの映画、明らかに30代〜40代男性がターゲット。それはもう鮮明に。要するに小さな男の子を連れて観賞するお父さんのストライクゾーンに直球を投げ込む。2年前の「メビウス」はTVと劇場でそのテストマーケティングを実施した訳です。この営業手法なら、大人向けのウルトラマンは創作できるのだと。

長野博つるの剛士、吉岡毅志がティガ、ダイナ、ガイアを演じた所謂“平成ウルトラマン3部作”は、初期シリーズ群およびメビウスとは世界観を異にします。初期シリーズのヒーロー達はM78星雲(ウルトラの星、光の国)から来訪した宇宙人。平成3部作はその設定を離れ、人間自身が光をつかむとした“人間ウルトラマン”。一般的には知ったこっちゃない話ですが、ファンにとっては大切なこと。本作は、両者を同一画面に存在させた顔見世興行のため、真剣なクリエイティブを見せてくれています。

脚本の長谷川圭一の仕事はもっと評価されてしかるべき。ウルトラヒーローがTVの中にしか存在しない現実世界を舞台に据えた上でパラレルワールドを梃子に設定の分散を統一。その上で、長野博ら平成3部作の主人公達を中途半端に挫折しかけたオトナ世代として描写し、劇場に来た若き父親達と同化させる。その趣向がクライマックスのインパクトを明らかに増幅し、見事に成功したと思います。例え荒唐無稽な夢でも本気で願えばヒーローにもなれる。長野・つるの・吉岡の変身シーンは真の見せ場。かつての少年たちの胸を熱くします。スーツにネクタイ姿の男がウルトラマンに変身したショットは史上初。でもちびっ子には難しいか。
はしゃぎ過ぎのエピローグが作品の質を明らかに損なうなど不具合・欠点も散見されます。でもイベント映画として及第点。40年以上の様々な創作エレメントにきちんと敬意を払ったキャスティングと編集の誠実さが素晴らしい。岸田森のスナップ写真には泣かされました。

ウルトラシリーズ”の放映開始は1966年(昭和41年)。前頁に記した「男はつらいよ」すなわち“寅さん”の第一作が1969年(昭和44年:前身のTV版はその前年)。いずれも40年以上の長きにわたり、多くの観衆に支持されてきた物語です。
寅さんの物語は、市井の小さき人間の心情に添うていくことの価値を一貫して紡いできました。一方、世界は容易に絶望の闇に向かって閉じてしまうものだけれど、夢と希望を強く意識することで人は光をつかむことができるというメッセージを少年たちに伝え続けたウルトラマンの物語。半世紀近くも支持され続ける物語には、そうした普遍的な価値観が必ず埋め込まれているものです。


※・・・願わくは、2004年にアダルトな世界観でウルトラマンのリファインを試みながら営業成果に恵まれなかった「ウルトラマンネクサス」を再生させたいものです。