「ウルトラマンメビウス」2006〜2007

06年から1年間にわたり放映された全50話を通しで観てみる。作品単体としてはいろいろ弱点や物足りなさがあるのは致し方ないですが、“ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作品”の看板に偽りはない。40年前に小さなTV映像にかじり付いていた少年たちが、当時の創作者たちへのストレートな敬意を胸に、丁寧に作り込んだ愛情あふれる作品でした。今更ながら感心します。

ウルトラマンというコンテンツは本当に息が長い。1966年に放映されて以来、幾世代もの少年たちに支持され続けて来ました。「怪獣出現⇒防衛チーム奮闘⇒ウルトラマン登場」という単純明快なフォーマット。金城哲夫という早熟な才能が確立した成果は半世紀近くも価値を保っています。もちろん単純な延命ではない。そこには40年間に関わった数々のクリエイターが注ぎ込んだ創意工夫と思想的格闘があります。たかが子ども番組と侮るなかれ。子ども向けだからこそ真摯な姿勢があります。侵略からの防衛をモチーフとする以上、国防の現実を幼い少年たちの物語にどう消化するかが常に問われ続けた40年。他国の同趣旨のコンテンツより遥かに複雑さを湛え、常に商業価値を失わない力の源泉はそのあたりにあると考えます。この「メビウス」という現時点での最新作にそれは顕著でした。

光の国のルーキーであるメビウスはヒビノミライという人間体の姿で、防衛チームGUYSの一員として地球と地球人の未来を守護する。従来のシリーズでは主人公以外の防衛チームメンバーはともすると添え物程度の設定になりがちでしたが今回は趣が違いました。些か図式的とはいえ、ミライを含む6人のチームメンバーのキャラをしっかり描き、彼らの友情物語というベースを作っています。過去のシリーズとのリンクを張り巡らすマニアックさが本作の記念作品たる主調ですが、ドラマの根幹は友情物語にありました。前述のウルトラマンのフォーマットに、1970年代に構築された刑事ドラマのフォーマット(ex「太陽にほえろ」)が加わり多層的な魅力を生んでいると思います。
特に主人公ミライを演ずる五十嵐隼士が良い。彼の表情が、作品世界のテイストやテーマを理屈抜きに表出していてとても良い。おそらくこのキャスティングも偶然ではないはず。このシリーズ、40年間の蓄積を本当に丁寧に掘り起こし、今はすっかり世俗の垢にまみれたかつての少年たちと、その子ども達世代の双方をターゲットにして創りこんでありますから、相当に考えたプロデュースであるとわかります。実際、かつての少年たる私自身、これだけ涙腺を刺激されるウルトラマンは初体験でした。