「日本沈没」・・・ビミョウです・・・。
以前、早く観たいと言っていました「日本沈没」。
やっと観てまいりました。
結論は「ビミョウ」という言葉が似合う出来でした…。はい。
正直なところ、残念でした。
樋口監督は、同世代ですし、特撮大好き少年だったという根っこが同じですし、狙いや想いはよーくわかるんです。
原作や73年版の映画への愛情もオマージュも、十分過ぎるほど感じるんです。
ですが、これは、贔屓目に見ても、失敗作と言わざるを得ないです。
(但し、「ゲ○戦○」のような駄作じゃないですよ。アレよりは遥かに語るに足ります。)
ちょっと切なくなって、前作をAmazonで買ってしまいました。
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今回のリメイクは、前作と同じ展開で勝負するのではなく、前作を補完するような描写で構成しようとした意図が感じられます。
それはそれでよいのではないでしょうか。
前作が謂わば為政者のドラマに徹したのに対し、一市民の感情を掘り下げてそこにドラマを据える、というのはありだと思います。
でも、これが成功しているとは思いません。
以下に、いくつか“この点を何とかしたかった”視点を記してみます。
①全編を通して、登場人物の物理的・時間的な位置関係がひどく曖昧です。
ドラマの土台が巨大な物理現象なのですから、その物理法則を大事に描かないと、人物たちの受けているプレッシャーに現実感がなくなってしまいます。大災害下の緊迫感が希薄なので、感動が盛り上がらずご都合主義の突っ込みどころになってしまいます。草薙クンも柴咲サンも、いつ・どこで・どのように移動して出会っているのかまったくわかりません。この点は、前作はきっちり整合性をとって演出してありました。リアリティの根幹は、こんな基礎的な部分にあるのです。
②登場人物の“職業意識”が希薄なのが残念。
例えば、せっかくのハイパーレスキューの設定が活きているとは思えません。草薙クンがクライマックスでアクティブになっていく時に、柴咲サンは何故泣いてすがるだけなんでしょうか? 想いあっていながらも、それぞれの職業意識の中で、プロとしての尽力に没入していく過程を並行して描けなかったんでしょうか?
どうもヒロインの造形が、数十年前くらいの女性像を基本にしてしまっているようです。職業設定が活きていないです。
あと、潜水艇を海溝の底に潜行させるには、多くの整備員たちの懸命の仕事が必要なはずですが、そういう描写がまったくない。これでは国土が沈むというとんでもない危機に、自分を捨ててでも献身する人々の姿が浮かび上がりません。
樋口監督が特撮を担当した傑作怪獣映画「ガメラ2」では、自衛隊の整備員の描写がありましたよ。これは金子修介監督のセンスでしょう。そういう部分を樋口監督には学んでほしかったですね。
③災害描写に手加減したことは残念です。
前作と決定的に異なるのは、地震災害やビル倒壊といった災害被害が、近年現実に起きていること、被災者もいることに配慮して、災害描写のリアリティを加減したと、各種インタビューにありました。だから今回のこの映画、観ていて殆ど恐怖感がありません。それを節度ということは確かに出来るとおもいます。
しかし、そこをセーブしなければならないのであれば、「日本沈没」という原作を扱う必要はないのではないでしょうか?
前作が何とかして描写しようとした、絶望的な惨状の描写があってこそ、クライマックスの感動が立ち上がってくるのではないでしょうか。
災害描写の恐怖感が欠落しているので、草薙クンと柴咲サンのテントの中のへんてこりんなラブシーンなんかが入り込んでしまいます。
他にもいろいろ思いつくことはあるのですが、なかなか書ききれません。
あと、福田麻由子という天才子役を使いながら、全然活かせていないのも勿体無い話です。
いろいろ酷評してしまいましたが、樋口監督にもこの原作にも思い入れがあるゆえです。
できれば、尺を伸ばして、撮り足しでもして、DVDで完全版でも試みたらどうかと思います。