2008-01-01から1年間の記事一覧

「4ヶ月、3週と2日」2007

昨年のカンヌ、パルムドール受賞作。ルーマニア映画は初見。1987年のルーマニア、ルームメイトを手助けするために奔走する女子大生の1日の物語。このところ口当たりのよい映画ばかりを手にしてきましたが、それらが飴玉に感じられるような辛口の切れ味。極…

「ハッピーフライト」2008

劇場公開終了直前のタイミングに駆け込みました。ようやく観ることができた矢口史靖監督の新作。前頁で「ガチ☆ボーイ」をマイベストに挙げましたが、こっちも素晴らしい。知的なセンスと完成度という点で「ハッピーフライト」はずば抜けています。2本目のマ…

「ガチ☆ボーイ」2008

結局今年もベストテンを選出できる程に劇場公開作を観ることはできず、なのでこれがベストだ、と喚いたところで確信は持てません。それを承知で敢えて断じます。この「ガチ☆ボーイ」は私にとっての本年ベスト。映画が好きでよかったな、と心底思える作品でし…

「勇者たちの戦場」2006

今年の年明けに公開され、興行成績が振るわなかったと聞きます。不入りだったのは米国でも同様だそうで。誰しも“見つめるのが辛い映画”はあり、戦争も経済も正義の大国という自信が崩れつつある合衆国民にとってこの秀作はまさにそれ。イラク派兵の現場で地…

「緋牡丹博徒 お竜参上」1970

富司純子でもなく、寺島純子でもない。“緋牡丹のお竜”こと矢野竜子は、藤純子でなくてはならない。「緋牡丹博徒」1968に始まり「緋牡丹博徒 仁義通します」1972までの5年間全8作。やくざ映画というジャンルの中で唯一無二のヒロインとして、“お竜さん”は記憶…

「ニキータ」1990

もう20年近く前の作品になってしまったリュック・ベッソンの代表作。自らの脚本を当時の妻アンヌ・パリローをヒロインに創造した極上の1本。荒唐無稽な娯楽アクションに過ぎないのに、そこに詰め込まれた豊穣さと美しさはどうだろう。プロットの細部は様々な…

「炎のランナー」1980

1980年イギリス映画にしてアカデミー賞作品賞受賞作。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったヴァンゲリスの印象的な旋律に乗せて、スローモーションの短いカットを畳み掛ける編集と、1920年代のヨーロッパの雰囲気をシックに描いたスタイリッシュな映画。1924年パリ…

「刑事コロンボ:忘れられたスター」1975

刑事コロンボ 完全版 Vol.16 [DVD]出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン発売日: 2005/01/01メディア: DVD クリック: 6回この商品を含むブログ (1件) を見る劇場公開された作品ではないが、コロンボシリーズは別格。70年代の各シリーズ群に…

「バンテージ・ポイント」2008

「バンテージ・ポイント」の面白さは、決して大統領暗殺テロという社会派的素材にあるのではありません。 極論すれば、モチーフとなる事件は何だって構わない。面白さの核心は“語り口”。そのテリングの切れ味の豊かさと楽しさ。重大事件発生までの30分間を、…

「クローバーフィールドHAKAISHA」2008

今年公開されたハリウッド娯楽作2本。突発的な都市災厄やテロリズムをモチーフとするが、思想の深さを問うものではない。面白さを追求する中で存分に実験精神を盛り込んでいます。タイトな上映時間に面白さと興味深さが満載。新しい才能の台頭にワクワクさせ…

憧憬の男優

追悼。緒形拳。1968年NHK「開化探偵帳」 新宮寺京介 1972年ABC「必殺仕掛人」 藤枝梅安 1974年松竹 「砂の器」 三木謙一 1975年ABC「必殺必中仕事屋稼業」 知らぬ顔の半兵衛 1976年ABC「必殺からくり人」 夢屋時次郎 1978年松竹 「鬼畜」 竹下宗…

「ちいさこべ」1962

かなり遅れてきた読者ですが、山本周五郎が好きです。時代小説はめったに読まないですが、滝口康彦と周五郎は別格。かつて黒澤明が周五郎作品の映画化に一貫してこだわったことはよくわかります。市井の視点を忘れない真摯なヒューマニズムが読むたびに沁み…

「大決戦! 超ウルトラ8兄弟」2008

「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」2006の成功を受け、2年ぶりの劇場用ウルトラマン。ユニークな快作。小さい子にも見応え満載。どこがユニークかと言えばこの映画、明らかに30代〜40代男性がターゲット。それはもう鮮明に。要するに小さな男の子を連れ…

「男はつらいよシリーズ」1969〜1995

気がつけば第一作目が公開されて40周年。私は決して熱心な観客ではなかったが、平均的な日本人観客と同じ程度にはこのシリーズが好きでした。もっとも吉岡秀隆演ずる甥っ子の満男を軸に据えた後期作品群には足が向きませんでしたが。 その程度の鑑賞者であっ…

「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」1975

“寅さん”全作で、最も好きな作品がこれ。あまりにも語りつくされたこのシリーズで、おそらく頂点に位置している出来栄え。そう確信します。 今更ストーリーを云々する必要もありませんし、このシリーズの妙味を語る気もありません。ただ、映画が制作されるに…

「妖星ゴラス」1962

1998年のハリウッド大作「ディープ・インパクト」と「アルマゲドン」は、巨大隕石衝突の危機を迎えた人類(=米国民)のパニックと苦闘を描いてヒットした。特に後者は、隕石破壊に赴く命懸けのヒロイズムを徹底した娯楽色タップリのベタな演出で大ヒット作…

「天然コケッコー」2007

昨年は、私の大好きな「リンダリンダリンダ」2005を撮った山下淳弘のあたり年。「松ヶ根乱射事件」の皮肉な面白さもよかったけれど、ストンと観る者の心に素敵なものを届けてくれたのは本作でした。 くらもちふさこの後期代表作を、「メゾン・ド・ヒミコ」20…

「ザ・シューター 極大射程」2007

そんな週末、TSUTAYAの半額レンタルで「ザ・シューター」を観賞。昨年劇場で見損なっていましたので。こっちは「ギララ」と真逆の作品でした。皮肉です。 原作の「極大射程」は読んでいませんが、狙撃という特殊スキルにこだわったヒーロー造形が魅力の多く…

「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」2008

リニューアルした新宿ピカデリーに初詣。またひとつ昭和の雰囲気のある大劇場が姿を消しました。でも快適な観賞環境が増えることは望ましい訳で、シートの質感と前列の頭が気にならない角度の配列など、さすがは最新のシネコンでした。しかし郊外型なら複数…

「仮面ライダー THE NEXT」2007

1971年に放映開始された「仮面ライダー」は、現在40代の男性諸氏にとって大いに記憶に残るヒーロードラマだった。 もの心ついた頃に「ウルトラマン」という巨大ヒーロー特撮番組でTVに釘付けにされた少年たちは、当時次のウェーブに飢えていた。そこに突然…

 「ランボー最後の戦場」2008

写真はすべて(C) 2007 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GMBH & CO.KG IV昨年同時期に公開された良作「ロッキー・ザ・ファイナル」に続き、スタローンが自身のヒットキャラクターの終章を描いた“RAMBO”。私は支持します。 ストーリーも登場人物も上映時間…

 「ミスト」2008

写真はすべて(C) 2007 The Weinstein Company随分久し振りの更新。決して飽いた訳ではなかったのですが、いろいろありまして筆が止まっていました。いろんな事にやや見通しもついてきたので再開です。 公開中の新作「ミスト」。原作であるスティーブン・キン…

 「阿片戦争」1943

京橋の国立近代美術館フィルムセンターにてマキノ雅広特集が組まれています。太平洋戦争真っ最中の昭和18年公開の大作「阿片戦争」を観てきました。いわゆるコスチュームプレイの形式です。登場人物は中国人と英国人しかいない訳で舞台は広東。それでもすべ…

 「スミス都へ行く」1939

原題は“Mr.Smith Gose to Washington”。直訳タイトルはやや子どもっぽいイメージですが、極めて硬派な内容です。製作公開はヨーロッパ開戦直前。太平洋戦争突入を控え日本での米映画公開は禁じられていきますが、本作はその直前にリアルタイムで公開され高い…

 「めぐり逢い」1957

一般に娯楽映画はどんなテーマを扱っていても、登場人物の関係の中に恋愛感情が描かれるものです。観客の感情を揺さぶるフックとしては「理」だけでは足りず「情」すなわち官能性が必要なのです。すべての映画は恋愛を描いていると言えますが、その中で主要…

 「宇宙戦争」2005

年は改まりましたがページ内容は変わり映えがしないと思います。本年も覗いて頂ける方が少しでもいらっしゃれば本当に嬉しく思います。さて、新年2作目の鑑賞はDVDにて(1作目は後日記します)。スピルバーグが一昨年に公開した「宇宙戦争」。評判が沈ん…