「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」2008

リニューアルした新宿ピカデリーに初詣。またひとつ昭和の雰囲気のある大劇場が姿を消しました。でも快適な観賞環境が増えることは望ましい訳で、シートの質感と前列の頭が気にならない角度の配列など、さすがは最新のシネコンでした。しかし郊外型なら複数のスクリーンを水平にレイアウトするのに、都心型は垂直に配置するしかないので、マイナー作品はやたらとエスカレーターで登る必要に迫られます。上映10分前からの入場なので、シートに座るまでに5分以上を要しました。開始ギリギリにチケット買った人たちが開映10分近くまで入ってくる始末。このあたりは考え物でした。
ピカデリーのレイトショーに駆け込んだのは「ギララの逆襲」を見たい一心でのこと。恐ろしくマイナーでマニアックな松竹作品ゆえ、松竹系シネコンでしか観られませんし、あっという間に打ち切りでしょうから上映予定が明らかなうちにと思ったのでした。

結果は、残念ながら…。立派にオフザケ映画を作ってやろうという志は買えるのです。事実、サミットの政治コントとリメイク処女のギララを用いた怪獣映画のパターンを重ね合わせてみるアイディアも悪くない。東宝怪獣映画やTVのウルトラシリーズからの様々な引用を徹底する構成がいけないとは言わないですが…。結局マニアのお遊びの域を出ていない。そこから出てみよう、旧いパターンを徹底することで何か新しい価値を見せてみようという意志が感じられませんでした。少なくとも私には。
監督の河崎実氏は私と同世代に属しますし、1960年代以降の怪獣特撮モノで映画の面白さを知った同好の者でもありますから、この映画にぶち込まれた膨大な引用の殆どは理解できますし、「怪獣映画は日本の伝統芸能」という監督の言葉も納得します。でも、それだけなんです。そこまでなんです。そこから何か突き抜けるものが欲しかった。それはチープでも構わないんです。それが残念でした。
面白いと言えば面白いんですよ。政治風刺劇としてはなかなか良くできたコントでもあります。ギララの造形も懐かしい。キャスティングにもマニアックな楽しさもある。でも、この面白さは劇場にお金を払って観に来ようとするまっとうな観客観衆に向き合っていない気がします。自分達のマニア目線を面白がれる人だけが楽しんでください、というメッセージですね…。いずれにしても広く劇場公開する制作意思ではなかったのでしょう。マニアでない友人を一緒にいかがと誘おうとしましたが、予定が合わなくてホント良かったです。