大沢在昌“新宿鮫”の最新刊、早く読みたい!

そんなに熱心なミステリー信者ではありません。
それでも時々はまるものはありまして、“新宿鮫”シリーズはリアルタイムで読んでいます。

その最新刊が書店に平積みになっています。
5年ぶりの続編です。

狼花  新宿鮫IX (新宿鮫 (9))

狼花 新宿鮫IX (新宿鮫 (9))


新宿鮫(ShinjukuZame)』
大沢在昌が描くハードボイルド警察小説。90年に発表され、吉川英治文学新人賞日本推理作家協会賞を受賞。

警視庁キャリア組織内の暗闘に巻き込まれ、その鍵を握って自殺した友人の遺書を託され秘匿した主人公“鮫島”。
それを疎んだ上層部は、事実上の自滅を期待して彼を都内で最も過酷な職場のひとつである新宿署の現場に配置した。
現場の馴れ合いに染まることなく警察官としての正義と誠意を貫いた結果、キャリアでありながら所轄署の孤高の一匹狼という稀有な刑事が誕生した。
どんな買収や取引にも応じず容疑者を検挙し続ける彼を、新宿のやくざたちは“新宿鮫”と呼ぶ。


90年の1作目以降、堅実な人気を誇ってシリーズが描かれ続けました。

『毒猿 新宿鮫Ⅱ』1991年
『屍蘭 新宿鮫Ⅲ』1993年
『無間人形 新宿鮫Ⅳ』1993年 直木賞受賞
『炎蛹 新宿鮫Ⅴ』1995年
『氷舞 新宿鮫Ⅵ』1997年
『風化水脈 新宿鮫Ⅷ』2000年
『灰夜 新宿鮫Ⅶ』2001年
『狼花 新宿鮫Ⅸ』2006年

この他に、単行本化されていない短編がいくつか存在しているようです。


最初の「新宿鮫」は、滝田洋二郎監督 真田広之主演で映画化されています。
映画では、敵役である同性愛者でもある拳銃密造者を演じた奥田瑛ニの鬼気迫る演技が絶品でした。

NHKのBSでは、舘ひろしを主役に据えて、何作かがドラマ化されています。


このシリーズの魅力は、何と言っても主人公鮫島のキャラクター。

彼が孤高な存在であるのは、決して自ら望んでのことではなく、彼が自分の内に抱いている警察官としての正義を貫こうとする結果、周囲が離れていくだけのことであるという皮肉。
その環境の中で淡々と孤独な闘いを続ける姿勢に、大小様々な妥協を繰り返す日常を過ごす読者としては、自分の叶わない何かを仮託できるのだと思います。

それこそが、ハードボイルドミステリーの魅力ですし、この小説にはそれがあると思います。


一連のシリーズの中で最も好きなのが、2作目の『毒猿』。


ターゲットを追って日本に潜入した台湾の凄腕の殺し屋“毒猿”。鮫島は、毒猿を追い続ける台湾の警察官“郭”と共に毒猿の行動を阻もうとする・・・。
台湾マフィアと新宿やくざのつながりをバックに、毒猿を愛してしまう残留孤児2世の風俗嬢が絡み、鮫島と郭、そして毒猿の間に生まれる国境を越えた奇妙な友情が胸を打つ。

もちろん、お約束のバイオレンス描写も盛り込まれ、味わい深いエンタメ小説になっています。

NHKでドラマ化されたときは、毒猿を永澤俊矢、その恋人を本上まなみが演じていて、それなりに印象的でした。


さあ、その最新刊が出たので、いつ読もうかと思っているところです。
ただ、スタートから16年も経過していますので、そろそろ減退期に入ってきているのではないか、という一抹の不安もあり、少々複雑な期待の中にいるのでした。

もし『狼花』を読了された方は、ネタバレのコメントなどされぬよう、お願い申し上げます。