記憶に残る映画たち(時系列)

ブログ開設1周年。
06年5月に始めて丁度1年経過です。非常に間口の狭い内容にもかかわらず、覗いていただける方の存在が嬉しくて続けています。“お陰さまで”という気持ちが記せます。社交辞令抜きです。ありがとうございました。
最初の頃は書き方も定まりませんでしたが、半年前くらいからスタイルらしきものが固まって来ました。素直に感じたことを記すことで、随分自分自身のことがわかってきた気がします。本当に皆さんのお蔭です。

その感謝を形にすべくカミングアウトいたします。
これは、敬愛するCarolitaさんのブログの2周年記念企画を、ご了解のもとに拝借したものです。私にとって大切な愛着ある25本です。
作品評価の意図はありません。これ以外にも凄いと思う作品は山のようにあります。何と言いますか、鑑賞したその時々の自分へのインパクトの大きさ、極めて個人的な愛着です。優劣基準でないことをご承知おきください。

製作年順です。ランキングではありません。文の下のURLは過去に記した日記の関連ページです。

【女だけの都】1935 ジャック・フェデー

女だけの都 [DVD]

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フランス映画全盛期のもので一番好き。ちょっとエロティックな知的コメディの傑作です。学生時にフィルムセンターにて鑑賞。
丹下左膳余話 百万両の壺】1935 山中貞雄
丹下左膳餘話 百萬兩の壺 [DVD]

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フィルムセンターにて。名匠山中作品では「人情紙風船」より好き。丹下左膳ものの異端ながら抜群に面白くて大満足した作品です。
【落ちた偶像】1948 キャロル・リード
落ちた偶像 [DVD]

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フィルムセンターにて。グリーン&リード作品では「第三の男」よりこっち。少年の視点から大人の痛みと不条理を描く巧みな心理描写が絶品。
七人の侍】1954 黒澤明
黒澤・木下・小津・溝口・成瀬といった戦後邦画の黄金期では、迷いに迷いますが結局ベタなこの1本。娯楽映画の金字塔。死ぬ前に劇場で観たい。
アラビアのロレンス】1962 デビッド・リーン中学か高校の頃にTVにて。主人公の人間像にひどく心惹かれました。堅実な努力家よりロマンティストの冒険家を志向する傾向があるようです。
世界大戦争】1961 松林宗恵
世界大戦争 [DVD]

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円谷特撮を駆使した作品群は子ども時代の夢の王国。そのからは異彩を放つ反戦映画。核戦争の悲劇を誤魔化しなく描いた、世界に例のない1本。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20070210
サウンド・オブ・ミュージック】1965 ロバート・ワイズベタな選出(笑)。初見は思春期のTV。日劇取壊し前の記念上映にも。ブリギッタを演じる黒髪の少女が好きです。勿論アンドリュースも。
【上意討ち 拝領妻始末】1967 小林正樹
上意討ち-拝領妻始末- [DVD]

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フィルムセンターにて。小林監督なら「切腹」なのでしょうが、私はこの作品の、三船敏郎演ずる主人公の愚かな選択が大好きです。
【大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス】1967 湯浅憲明5歳の頃、初めて自分の意思での劇場鑑賞。“映画って面白いんだ”と確信した原体験。これがなかったら違う人生でしょう。
風林火山】1969 稲垣浩
風林火山 [DVD]

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軍師山本勘助の成り上がりと純情と挫折。凄く面白くて見応えたっぷりでした。フィルムセンターで鑑賞。立派な娯楽作が好きなんですね。
ポセイドン・アドベンチャー】1972 ロナルド・ニーム
初めて怪獣もの以外を意識した作品。中1時家族で佐世保の劇場にて。自ら行動してこそ幸運は掴める、という米国的メッセージに感動。
日本沈没】1973 森谷司郎
日本沈没 [DVD]

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これも中1。危機に直面して動き回るD計画の男たちの姿にしびれました。格好いい社会人像はこれで刷り込まれたもの。佐世保東宝にて。
【スティング】1973 ジョージ・ロイ・ヒル
スティング [DVD]

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亡父と大洋映劇(福岡の方ならわかる)で鑑賞。二人でラストに愕然としてやられて出てきました。センスが良いってこういうこと。
砂の器】1974 野村芳太郎
砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

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何度も観ました。最初からラストシーンまで克明に覚えています。台詞も殆ど再現することができます。大事な映画です。中洲の松竹にて。
JAWSジョーズ】1975 スティーブン・スピルバーグ世間の誰もが納得する怪獣映画がないという不満を一発で解消してくれた作品。スピルバーグでは「未知との遭遇」と迷います。大洋映劇にて。
幸福の黄色いハンカチ】1977 山田洋次
幸福の黄色いハンカチ [DVD]

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これもベタですね。でも、やっぱり好き。高校の頃試写会で。健さんはヤクザ映画も良いですが、これと「駅 STATION」がリアルタイムでした。
【皇帝のいない八月】1978 山本薩夫
あの頃映画 「皇帝のいない八月」 [DVD]

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弱点が多くて傑作とは言えませんが、心惹かれてやまない何かがある。タイトルの語感もそのひとつ。“好き”は理屈じゃないですね。早稲田松竹にて。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20060912
ディア・ハンター】1978 マイケル・チミノ
ディア・ハンター [DVD]

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世界の不条理に向き合った青春の魂の痛みを、そのまま抉り出して映画にした1本。正真正銘の傑作。今はないテアトル東京にて。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20070422
ルパン三世カリオストロの城】1979 宮崎駿
ルパン三世 - カリオストロの城 [DVD]

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宮崎映画はこれに尽きる。後は「ラピュタ」「トトロ」まで。以後はあまり・・・。池袋に2日続けて観に行った。ラストも最高、面白さ文句なし。
伝説巨神イデオン 接触編・発動編】1982 富野喜幸接触編はTVの再編集。肝心なのは発動編。人間存在の無常観、絶望と哀切、微かな希望をここまで表現した映画を私は知りません。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20060924
時をかける少女】1983 大林宣彦
時をかける少女 [DVD]

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大林映画は「ふたり」の総合点が高いのですが、画面の空気感が個人的にシンクロ。私の大事な友だちはラストで引くと言いますが、私は泣きます。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20060728
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー】1984 押井守
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]

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邦画ではアニメに知的な構造のものが多いのですがその嚆矢でしょう。公開時に劇場鑑賞。「機動警察パトレイバー劇場版」も傑作でした。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20061020http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20070118
【エイリアン2】1986 ジェイムズ・キャメロン私たち世代の映画ファンが見たいと思っている画面を見せてくれるキャメロン監督。“This time is war."のキャッチに偽りなし。燃えます。
ガメラ2 レギオン襲来】1996 金子修介
ガメラ2 レギオン襲来 [DVD]

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何と、ガメラ映画が2本になるとは。怪獣映画という日本独自のジャンルの中で、おそらく最も完成度の高い作品。作者たちに共感します。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20070318
【映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲】2001 原恵一
どの時代どの社会でも、未来の幸福を目指して努力することでしか生活は維持できないと伝える紛れもない傑作。偏見なく評価して欲しいと願う1本。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20060829


かつて文藝春秋社に生涯のベスト10選出を依頼された井上ひさし氏が、“10本など無理、100本なら考える”と断ったところ、100本選んでくださいと言われて選出されたことがありました。氏は、次点含めて101本を選んだ後、ベスト200でないと無理だ・・・、と愚痴られました。
その心境はよくわかります。評価の優劣じゃないと自分に言い聞かせながらも、上記の25本を選ぶのなら、これだってあれだって、とくよくよしてしまいます。なかなか難しいものです。

並べてみると、かなり邦画とアニメーションが多い。イタリア映画がないのも不思議。もっと情緒的な感動作や芸術性の高いものも多くなると思いましたが、意外に知的な面白さと娯楽作志向が強めに出たようです。最近作は、未だ自分の中で消化しきれていないのでしょうね。10年後くらいにまたやってみると新顔が出てくるのでしょう。

ブログを記してみて、やっぱり映画や文芸の世界が好きな人間なのだなと、己の輪郭を掴むことができたように思います。引き続き、2年目も記してまいりますので、時々覗いてみていただければ幸いです。


※追記 “プラス5本”

ここまで25本を列挙したものの、メジャー路線(超マイナーもありますが)一辺倒と誤解されるのも何だか居心地が悪いような気がしてしまいました。で、上記とは別にあと5作品を記します。

【巨人と玩具】1958 増村保造

企業のマーケティング活動を極端に風刺したダークなコメディ。今見ても十分納得です。他の選者はこんなランキングに入れないなぁ、きっと。
リオ・ブラボー】1959 ハワード・ホークス

リオ・ブラボー [DVD]

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これぞ“男の映画”。人物全員に見せ場あり。顔見世興行の魅力で泣かせ、スリルたっぷりの対決に燃えます。これが映画、映画のお手本です。
秋刀魚の味】1962 小津安二郎
[rakuten:book:11640567:detail]
遊び心と哀感の落差が大きくて、小津映画で一番好き。岩下志麻が綺麗。もし仲間が居れば、あの台詞回しで“小津ごっこ”したかった。
【ひまわり】1970 ヴィットリオ・デ・シーカ[rakuten:guruguru2:10023470:detail]
マンシーニの主題曲だけで泣けます。大人のラブストーリーであり反戦映画である傑作。ネオリアリスモが娯楽作として結実した成果です。http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20061116
レインマン】1988 バリー・レビンソン自閉症”を正面から扱いながら、情感豊かな大作に仕上げたハリウッドの力量には感服します。ホフマンもクルーズも見事な演技。

うーん。これでも足りない・・・。
こういう企画はあまり試みない方が良さそうです。