「怪獣大戦争」1965
私が劇場で観たおそらく3本目の映画がこれ。実際には最初の公開から何年か経って“東宝チャンピオンまつり”のために短縮編集された「怪獣大戦争・キングギドラ対ゴジラ」を観ています。
怪獣映画としての質はそう高くない作品です。「三大怪獣・地球最大の決戦」と「地球防衛軍」を足して2で割った安直な企画であることは確か。円谷英二が腕を揮った作品のわりに怪獣の暴れる場面がグダグダ。作れば当たる“怪獣ブーム”は経済成長によるコスト上昇と相まって70年代に質的劣化をもたらします。本作にはその兆候が散見されます(ex.ゴジラの「シェー」ポーズ、旧作フィルムの流用等)。とはいえ、まだここには東宝特撮全盛期の輝きが残っています。
怪獣場面はともかく地球侵略を企む宇宙人と人類の攻防の面白さ。UFOがテクノロジーを誇示するシーンのパノラマの空間デザインはさすがに円谷ブランド。劇場のスクリーンの記憶がずっと鮮明に残ってます。その絵ゴコロには唸らされます。
“X星人”。何よりこのイメージが素晴らしい。彼らのコスチュームデザインなど半世紀近くを経過してもセンス良いです。彼らのリーダーを演じたのが土屋嘉男。既に売れっ子だったにも関わらず、終始素顔のわからない扮装できちんと演じきってます。黒澤明が自宅に住まわせ可愛がっただけの人徳を感じます。また、地球に潜入して工作活動をするも、ターゲットを愛してしまい抹殺される女性星人の水野久美。彼女のビジュアルインパクトもまた素晴らしい。キャラ設定がスパイものの常道でなかなか大人っぽい展開です。
彼女に惚れられる科学者にニック・アダムス。この小柄なハリウッド俳優は、今観るとダニエル・クレイグに印象が似てる。こんなイメージの連鎖も楽しいです。ある周波数の音がX星人の弱点であることを発見した人類が反攻に出るクライマックス。バックに畳み掛ける伊福部昭の「怪獣大戦争マーチ」。この燃える展開は、後にティム・バートンの「マーズ・アタック」が踏襲してまして、そんなイメージの連鎖も楽しいです。
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