「ホット・ファズ “俺たちスーパーポリスメン!”」2007

昨年夏の劇場公開はファンのリクエスト運動の成果だったとか。ようやくDVD観賞。これはもう、理屈ぬきで支持。愛すべき素晴らしきバカ映画。こんな娯楽映画への愛情溢れる一本を手渡されたらお手上げです。小難しい御託はさておいて、存分に味わい楽しむべきでしょう。いや楽しい、愉しい!

英国首都警察のエンジェル(サイモン・ペッグ)は、あらゆる点でずば抜けた職務遂行能力を誇る気鋭のスーパー警官。でも些細な理由から、のどかな田舎町に転属させれられてしまう。犯罪と無縁の小さな町では、事件といえば家畜の失踪と万引き程度。あまりのギャップに自分をもてあますエンジェルは、クサりながらも署長の息子で刑事映画マニアの警官ダニー(ニック・フロスト)とペアを組んで平和な日常を送っていた。しかし何かがおかしい・・・。やがて奇妙な死傷事故の連続に疑問を感じたエンジェルは、この町の謎と向き合うことになる。そして怒涛のクライマックスへ!
一応はミステリーの構成なのでネタバレは避けますが、バレたからといって面白さに大差なし。ハリウッドから数限りなく世界に送り込まれ続けてきたサスペンス映画、アクション映画、ホラー映画、刑事バディ映画、ミステリー映画・・・etc.へのオマージュと皮肉があらん限りぶち込んであります。少しばかり日本の怪獣映画の味わいすら。しかも、こういう作品にありがちなチープさが目立たない。英国映画らしい品格と、トニー・スコットばりのスタイリッシュで躍動するカットの畳み込みが爽快。英国風ギャグのテンポでは笑えない、といった批判もありますが、そこはもう好みの問題。私は十分楽しめました。万人受けはそもそも意図していない作品。それでも結構、誰もが面白がれると思いますよ。

深いテーマ性など無関係なマニア映画ですが、シナリオはきちんと伏線を回収していてミステリーとしての破綻も少ないんですよね。しかも、ティモシー・ダルトンやらジム・ブロードベントやら、あの名優がこんな役で! という嬉しい驚きもあります。だって、T.ダルトンってシェイクスピア俳優で4代目ボンド役者ですよ。その彼があんな演技まで見せてくれるのですから本気度合いが違います。芸術性とかベストテンとかとは無縁でも、映画が好きな連中が、老いも若きも存分に楽しみながら創ったんですね。それが伝わります。

序盤から中盤の伏線とストレスをすべて収斂して爆発するクライマックスの素晴らしいこと。いつかみたアクションのオンパレードに燃えながら、ブラックな笑いに知的な刺激も楽しめる。そして意外にまっとうなカタルシスを味わいながら、幸せなエンディング。嗚呼、娯楽映画っていいよね、と言いたくなる一本です。
監督・脚本のエドガー・ライト、脚本・主演のサイモン・ペッグのコンビは、本作に先立って「ショーン・オブ・ザ・デッド」2004(日本未公開)というゾンビ映画へのオマージュ作品をヒットさせていますが、私は未見。ホラーやスプラッタが大の苦手の私ですが、これはチェックしたいと、と思っています。