2007-01-01から1年間の記事一覧

 「スターリングラード」2001

第2次大戦の悲惨なる激戦として名高いスターリングラード(現ボルゴグラード)の攻防戦をモチーフにジャン・ジャック・アノーが描いたユニークな視点の戦争映画。日本と日本人は、太平洋戦線と中国戦線、沖縄戦と被爆を含めた本土空襲の悲惨の体験があまりに苛…

 「駅 STATION」1981

名TVドラマライター倉本總が高倉健のために書き下ろしたオリジナルシナリオ。美しく厳しい北海道の四季を背景に、オリンピック射撃代表経験ある若くはない警察官と関わった人々との苦く切ないエピソードを連ねた作品。突き放した叙情とでもいうような、大…

 「七人の侍」1954

日本映画史上、本作ほどあらゆる属性の人々に評価された作品はないでしょう。それほどの作品、しかもあらゆる評価評論が語りつくされた名作を採り上げるのはあまりに敷居が高いのですが、敢えて記してみます。昭和29年は、日本映画界のひとつのピークの時期…

 「リトル・ミス・サンシャイン」2006

香港のオリジナルをリメイクした「ディパーテッド」でなく、本作がアカデミー作品賞を獲っていたらハリウッドの流れも少し変わったかもしれません。低予算ながら非常に知的で時代性に富み、観るものに等身大の感動を与える佳作。小粒ながら愛すべき光を放つ…

 「河童のクゥと夏休み」2007

若い人たちには当然実感できないでしょうが、これほど“松竹富士”の相応しい新作は久し振りです。 私は以前、原恵一は木下恵介の正統なる後継者ではないか、と記したことがありましたが、本作を観てそれは確信となりました。紛れもありません。写真はすべて (…

 「かくも長き不在」1961

DVD化されていないためVHSを探していました。ようやく渋谷Q-FRONTでレンタル。 これほどの傑作がディスク化されていないとは・・・。旧いテープの荒れた画像。しかし、私の生涯の10指に確実に入る凄い作品でした。 淡々とした中年男女二人だけの演技と会…

 「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」2001

キネ旬から「BSアニメ夜話vol.5」が発売されたので早速購入。映画の内容を反芻しています。この10年で公開された日本映画の中でも出色の出来栄え。お子さま向けギャグアニメの劇場版でありながら、そのモチーフとテーマの今日性と切り込みの鋭さは極めて…

 「バトル・ロワイアル」2000

深作欣二監督の事実上の遺作。 故石井紘基議員が鑑賞規制を問題提起するなど、その暴力描写が話題になった話題作でした。確かに、本作のモチーフは殺し合いゲームという圧倒的な暴力を強制された理不尽下の中学生たち。極めて異常な状況を描く異端の創作であ…

 「007/カジノ・ロワイヤル」2006

昨年末に贔屓の引き倒しの日記を記しています。 http://d.hatena.ne.jp/kaoru1107/20061229 写真はすべて C)2006 Sony Pictures Entertainment (J) Inc. All Rights Reserved. DVDで再見しても評価に変化はありません。最高・最良・最善のボンド映画をリ…

 「二百三高地」1980

途方も無い消耗戦で多数の戦死者を出した、日露戦争における旅順攻略を描く東映の超大作。公開当時、さだまさしの主題歌「防人の唄」と共に大ヒットしました。 しかし動員の中心は中高年層以上であり、自分ら若い世代はあまり関心を持たなかった記憶がありま…

 「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」1979

ドライでスタイリッシュな表現と、戦争体験へのこだわりを貫いた孤高の個性派:岡本喜八監督作品。 作品群の中では比較的地味な存在ですが、リアルタイムで接した経験から私的には大事な映画です。某王子の存在で、ここ40年くらいの間で最高の盛り上がりを見…

 「戦火の勇気」1996

湾岸戦争版“藪の中”です。 よく描き込まれた脚本。まさに秀作。組織の中で誠実を貫く男の葛藤ならはまり役のデンゼル・ワシントン、もの凄い減量に挑戦して、苦悩する青年を体当たりで描写したマット・デイモンなど、役者の魅力がしっかりとした物語の骨格を…

 【再掲】「悲しき天使」2006

写真はすべて(c)ツインズジャパン昨年ごく限られた劇場でひっそり公開された、大森一樹監督のインディペンデント作品。 DVDがレンタルにも並びました。 再見して、これは少しでも知っていただくべき映画と思い、昨年11月の日記を、若干修正して以下に再…

 「なごり雪」2002

Photoすべて(C)PSC・TOS.E.P・大映 万人受けに何ら執着することなく、気に入ってくれるひとにだけ大切にそっと手渡してくれるかのような1本です。大林宣彦監督作品の持つ、非リアリズムの魅力がわかる観客への贈り物。監督自身が自らの21世紀を本作から始め…

 「フラガール」2006

王道だと思いました。これは、かつての所謂“松竹大船調”ではないでしょうか。 効率よい興行的成果と質的水準の確保を両立するために、稀代の名プロデューサー城戸四郎氏に代表される製作者たちが構築した、作品のトーン&マナー。それは撮影所システムという…

 「時をかける少女」2006

昨年夏の公開時にテアトル新宿で観て絶賛してから1年近くが経過しました。早いものです。DVDで再見しましたが、私の評価は変わることはありません。絶賛に値します。極めて私的な評価に過ぎませんが。 私は何故、本作をそれほど評価するのでしょうか?ま…

 「選挙」2007

フィルム収録でなくデジタルビデオですので、正確には“映画”と言い難いかもしれませんが、ベルリン・香港はじめ各国の映画祭に招待されていますので、映画の範疇に入れてもよいのでしょう。 今月、渋谷のイメージフォーラムで公開されています。今後順次国内…

 「夏への扉」R.A.ハインライン(1957)

学生の頃に大いに面白く読んだ記憶があります。四半世紀を超えて再読しました。 本作の主人公ダンは、2つの方法で30年の時を超えるのですが、今回の再読においてもそれに近い時間の経過があった訳です。タイム・トラベルもののスタンダードといえる小説です…

 「衝動殺人 息子よ」1979

シナリオライター山田太一氏のキャリアの原点が故木下恵介の助監督だったことは大切な事実です。1998年12月30日に逝った木下恵介の葬儀にて、山田氏の弔辞より抜粋。「日本の社会はある時期から、木下作品を自然に受けとめることができにくい世界に入ってし…

 「博士の愛した数式」2006

優れた小説を映像化することは、本当に難しいことだと思います。 この見事な見事な珠玉のような小説の映画版は、やはりその難しさを露呈してしまいました。 ただ、決して私は否定的に観た訳ではありません。この映画に関わった人々が、いかにこの原作を愛し…

 「男たちの旅路〜廃車置場」1977.2.5.

おそらく私の思春期後期〜青年期に、最も影響された作家が山田太一でした。 例えば、30年前にNHK土曜ドラマとして放送されたこの作品も、今の自分の意識の奥底にしっかり横たわっているようです。もう30年も経過しているのにです。それほどにインパクトが…

 「上意討ち―拝領妻始末―」1967

前回の記述にあたって、改めて自分の鑑賞歴を思い返してみた訳ですが、世間評価がどうあれ好きな作品を再確認することになりました。 この「上意討ち」、まさにそうした1本です。原作は時代小説家滝口康彦。下級武士の苦悩と苦闘を題材に感銘深い短編を数多…

 記憶に残る映画たち(時系列)

ブログ開設1周年。 06年5月に始めて丁度1年経過です。非常に間口の狭い内容にもかかわらず、覗いていただける方の存在が嬉しくて続けています。“お陰さまで”という気持ちが記せます。社交辞令抜きです。ありがとうございました。 最初の頃は書き方も定ま…

 「ロッキー・ザ・ファイナル」2006

休日出勤の残業に何とか区切りをつけて、職場に隣接したシネコンに駆け込みました。時計を見れば上映5分前。駆け込んで大正解。 あまり冷静な評価はできません。私の胸は上映時間中ずっと締め付けられていましたから。 第1作がアカデミー作品賞をかっさらっ…

 「ディア・ハンター」1978

日本公開は1979年。アカデミー作品賞を冠に、確かGW興行の目玉のひとつでした。今は無きテアトル東京に出かけていった記憶があります。 白状しますと、18歳になったばかりの私は、この映画を受けとめるにはあまりに未熟な精神しか有していませんでした。情…

 「ロング・キス・グッドナイト」

結局はB級大作扱いに落ち着くのでしょう、この映画。1996年レニー・ハーリン監督が当時の妻だったジーナ・デイビスをヒロインに撮ったアクション。シェーン・ブラックのオリジナル脚本には何と400万ドルが支払われたとか。 サスペンスアクションとしては及…