「豚と軍艦」1960

いかに巨匠、名匠といえど肌の合わない監督・作家というのはいるもので、私にとって故今村昌平監督とはまさにそういうお方でした。唯一リアルタイムで観た「復讐するは我にあり」1979の重厚さと壮絶さに素直な感動を憶えた他は、なかなかその作品世界に入り…

「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」2006

“ウルトラマンシリーズ生誕40周年記念作品”として昨年放映されたTVシリーズの劇場映画版。単体の文芸作品としての質感はともかく、長きにわたって少年たちのアイドルであり続けているキャラクター系譜のイベント映画としての完成度を追及しています。 “現…

「赤ひげ」1965

3時間5分という長尺でありながら、飽きたり間延びしたりすることの全くない見事な出来栄え。黒澤明監督全作品中、ある意味最も完成度の高い映画だろうと思います。所謂チャンバラ=殺陣がない時代劇でこれほど面白く観られる作劇はそうそうありません。 1962…

「赤い鯨と白い蛇」2005

神田神保町の岩波ホールにかかっていた時に関心がありながら、そのままにしていました。DVDでようやく鑑賞。 日本テレビのドラマ・ディレクター、芸術祭女とも呼ばれたせんぼんよしこ氏の、初めての劇場用映画監督作品。これはなかなか素敵な映画でした。…

 「劇場版デジモン・アドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」2000

ようやく観ることができました。「時をかける少女」2006で名を上げた細田守監督の劇場作品出世作。“デジモン”シリーズ自体は未見でしたが、そんなことは大した支障ではなく堪能できます。確かに見事な中篇映画でした。面白く手に汗握って燃えられるストーリ…

 「妻は告白する」1961

かつて大映がつるべ打ちした“監督:増村保造&主演:若尾文子”作品群の代表作。 TSUTAYAの邦画コーナーに増村作品がずらっと並んでいることに意外な嬉しさを感じています。好きなんです、増村保造。リアルタイムで接したのは高校時代に観た「曽根崎心中」。…

「300 スリーハンドレット」2007

アクション映画としての面白さは図抜けていると思います。そして残酷な描写がこれでもかと詰め込まれているにも関わらず、画面の美しさが強く印象に残ります。その意味でとっても完成度が高い映画です。私はまったく飽きません。素晴らしかった。 しかし、本…

 印象深い劇場鑑賞作(時系列)

最近覗いていただけるようになった方も少しだけ増えてきました。ですので自己紹介代わりにリアルタイムで影響された作品について記してみたいと思います。今年5月初旬に記したページの複写焼き直しに過ぎないのですが、ご参照いただければ幸いです。優れた作…

 「飛べ!フェニックス」1965

ロバート・アルドリッチ監督作品で私にとって真にリアルタイムなのは遺作である「カリフォルニア・ドールズ」1981なのですが、ディスクも未発売でして記憶が曖昧。そこでこちらを記すことにします。(「C.ドールズ」は本当に傑作なのですが、どうしてDVD…

 「息子のまなざし」2002

決して好きな作風でないにもかかわらず、ダルテンヌ兄弟の作品には引き付けられてしまいます。「イゴールの約束」1996で注目を浴び、「ロゼッタ」1999「ある子供」2002でカンヌを制した、このベルギーの兄弟監督の人間を捉えるスタイルには圧倒されます。労…

 「あしたのジョー2」1981

私たちの世代の男たちの多くにとって「あしたのジョー」という物語は、記憶の中で独特の位置を占めていると思います。 最初に刊行されていた講談社コミックス全20巻は幾度読み返したのか、ちょっと数え切れません。そういう人は決して珍しくないと思っていま…

 「レッド・サン」1971

アラン・ドロンが来日したそうで、記憶の底に眠っていたこの映画のことを思い出しました。 60年代後半〜70年頃、国内で大人気だったドロン(仏)とチャールズ・ブロンソン(米)、そして日本が誇るトップスター三船敏郎の3人を主役に据えた西部劇。しかもフ…

 「さらば愛しき大地」1982

学生時代にリアルタイムで観た邦画の中でとりわけ印象深い作品でしたが、まだこの世を生きることの意味を殆ど知らなかった未熟な身では到底“好き”とは言いがたい種類の映画でした。 1982年の映画賞を総なめにした高品質の映画。昨年10年ぶりの新作「カミュな…

 「千年女優」2001

本作が文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞を「千と千尋の神隠し」と分け合った事実は、一般には殆ど知られていません。旬を過ぎた大御所の作品が持て囃される中でも、次代の才能はきっちり台頭しているものです。 事実「千と千尋・・・」のディティールの記憶…

 「幸福」1981&1980.7〜9

学生時代のほぼ同時期に観た二つの「幸福」。 1本は、名匠市川崑監督が81年に公開したキュートな刑事ドラマの佳作。もう1本は80年の夏にTBS系で放送された高品質の連続TVドラマ。当時どちらも興味深く観たのですが、こうして年齢を重ねて振り返ると、…

 「グロリア」1980

監督ジョン・カサベテス&主演ジーナ・ローランズ。この素敵な夫婦の手で制作された映画の中で、おそらく最も多くの人に愛された作品。シドニー・ルメット&シャロン・ストーンの99年リメイク版は未見です。 ジーナ・ローランズのカッコよさが語りつくされて…

 「明日に向かって撃て!」1969

映画というメディアに青春があったとして、その瑞々しさが結晶した紛れもない1本。1969年というタイミング、米国の大地、スタッフ&キャストの“旬”がフィルムに固定化されています。“アメリカン・ニューシネマ”という枠組みの中に位置づけられますが、そん…

 「それぞれの秋」1973/9/6 〜 1973/12/13

TVドラマへの思い入れを失ってからどれくらいになるでしょう。 映画の歴史は110年。TVドラマのそれは50年。それぞれのメディアがその青春期を終え、成熟に向かいつつあります。技術進歩がパーソナルな鑑賞機会(属性別に細分化した視聴)を増幅させ、T…

 「素晴らしき哉、人生!」1946

名匠フランク・キャプラが第二次大戦直後に撮ったハート・ウォーミングな名作。“甘すぎる”という批判は重々承知の上で、お気に入りのクラシックに据えています。確かに飛び切りのハッピー・エンドが印象に残る映画なので“キャプラ・コーン”と呼ばれる甘口人…

 「戦場のアリア」2005

何の予備知識もなくDVD鑑賞。成る程、05年の仏観客動員数一位も頷けました。 それなりに突っ込みどころや弱点はありますが、しっかりと心を打つ爽やかな甘美さに辛口の現実感をブレンドし、第一次大戦の前線に闘った兵士たちへの誠意とオマージュを込めた…

 「白バラの祈り」2005

奇しくも前頁の「わが命つきるとも」の相似形のようなドラマです。16世紀における英国のトマス・モアと全く同じに、1943年2月のドイツ・ミュンヘンで若干21歳の女子大生ゾフィー・ショルが断頭台に消えた事実を正確に再現した映画。鳥肌が立ちました。恐ろし…

 「わが命つきるとも」1966

名匠フレッド・ジンネマンの英国作品。1966年のアカデミー作品賞など6部門を総なめした硬派な史劇。私の大好きな1本です。 日本には“長いものには巻かれろ”ということわざがありまして、所謂サラリーマンたる私などはよく噛みしめることが多い訳です(笑)。…

 「連合艦隊」1981

日本人にとって8月はやはり特別な月であり、戦争と戦場を描く映画に対する想いを新たにするのは、私自身が太平洋戦争敗戦から16年しか経過していない時に出生した子どもであったことによるのでしょう。 最近では、60年前には米国や中国と戦争をしていたのだ…

 「22才の別れ Lycoris―葉見ず花見ず物語」2006

大林宣彦の“大分+伊勢正三”モチーフ作品第2弾。昨年の東京国際映画祭の時は気づきませんでした。本日、テアトル新宿の公開初日。初回上映を観るなど初めてのこと。上映終了後に舞台挨拶あり。大林監督と主演の筧利夫だけかと思ったら、とんでもありませんで…

 「時をかける少女」1983

私がこの1年絶賛を惜しまない細田守版2006年作品に先立つこと23年。この年、この筒井康隆の傑作ジュヴナイルの実写映画化の決定版が、大林宣彦の手によってリリースされました。 「転校生」1982、「さびしんぼう」1985と共に“尾道3部作”を構成する本作は、…

 「スターリングラード」2001

第2次大戦の悲惨なる激戦として名高いスターリングラード(現ボルゴグラード)の攻防戦をモチーフにジャン・ジャック・アノーが描いたユニークな視点の戦争映画。日本と日本人は、太平洋戦線と中国戦線、沖縄戦と被爆を含めた本土空襲の悲惨の体験があまりに苛…

 「駅 STATION」1981

名TVドラマライター倉本總が高倉健のために書き下ろしたオリジナルシナリオ。美しく厳しい北海道の四季を背景に、オリンピック射撃代表経験ある若くはない警察官と関わった人々との苦く切ないエピソードを連ねた作品。突き放した叙情とでもいうような、大…

 「七人の侍」1954

日本映画史上、本作ほどあらゆる属性の人々に評価された作品はないでしょう。それほどの作品、しかもあらゆる評価評論が語りつくされた名作を採り上げるのはあまりに敷居が高いのですが、敢えて記してみます。昭和29年は、日本映画界のひとつのピークの時期…

 「リトル・ミス・サンシャイン」2006

香港のオリジナルをリメイクした「ディパーテッド」でなく、本作がアカデミー作品賞を獲っていたらハリウッドの流れも少し変わったかもしれません。低予算ながら非常に知的で時代性に富み、観るものに等身大の感動を与える佳作。小粒ながら愛すべき光を放つ…

 「河童のクゥと夏休み」2007

若い人たちには当然実感できないでしょうが、これほど“松竹富士”の相応しい新作は久し振りです。 私は以前、原恵一は木下恵介の正統なる後継者ではないか、と記したことがありましたが、本作を観てそれは確信となりました。紛れもありません。写真はすべて (…